「いつ」ではなく「どのように」を探る地震予知
次に起こりそうな地殻変動を予測する
いつ地震が起こるのか、発生時期を予知することは、極めて困難なのが現状です。しかし、地震が起こる状況は予測することができます。つまり、ある特定の断層で次に地震が起こるとしたら、どのような地殻変動が起こるのかは、ある程度わかるのです。例えば、南海トラフ(駿河湾から四国の南にまで続く海底にある深い溝)では、これに沿って、東海、東南海、南海などの巨大地震がこれまで定期的に起こってきました。いま、このエリアを掘削し地下の岩盤を採取して、過去に地震を引き起こした断層の調査が進んでいます。これは次に地震が起きたとき、防災・減災に役立てるためです。
地下の岩盤はかつてどのように動いたのか
1999年には、台湾で大きな地震が起こりました。そのとき台湾の地下で何が起こったのかを調べるため、大規模な掘削調査が行われました。地下から掘り出した岩石を顕微鏡で調べたり、化学分析を行ったりした結果、明らかに異常が起きていたことがわかったのです。
水が熱せられて、「350℃以上の高温の流体、さらには超臨界流体(気体と液体の区別が付かない状態で、気体の拡散性と液体の溶解性を持つ)」となった痕跡が見つかりました。この水の変化により「摩擦係数」が急激に下がり、巨大な地面のズレを引き起こしたと考えられます。
観測だけでなく分析も必要な地震研究
地震の研究では、GPS(全地球測位システム)や地震波などを用いた観測だけではなく、地下の断層を構成する岩石を使って、さまざまな計測や実験が行われます。地震エネルギーが加わったとき岩石はどのように動くのか、またどのように物質の性質の変化が起こるのかを調べるのです。室内の実験施設では、擬似的に地中深くの環境を再現し、地震のときのようなエネルギーを加えて物質の変化を調べます。圧力などの条件を実験室で完全に再現することは難しいですが、その変化を物理的な変化と化学的な変化の両面から知ることで、地震が発生したときの地殻変動の様子を予測することができるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪大学 理学部 物理学科 准教授 廣野 哲朗 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
地球科学、物理化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?