電子機器の熱問題を解決! 高速で熱を移動させる「ヒートパイプ」
電子機器の「熱」問題
私たちの生活は多くの電子機器に支えられています。いまやなくてはならないものですが、電子機器には熱の問題が付いてまわります。例えばスマートフォンやパソコンは使っていると本体が熱くなりますよね。内部から熱が発生しているためです。この発熱が問題で、温度が高くなるとパフォーマンスが下がるので、電子機器には熱を逃がす工夫が施されています。今後、電子機器の発熱量はパフォーマンスの向上とともに増大すると予想されており、現在の熱対策はいずれ限界を迎えます。このため、高速で熱を伝える構造体の研究が行われています。
ヒートパイプで素早く熱を移動させる
電子機器の冷却には「ヒートパイプ」という構造体が使われています。これは毛細管構造を備えたパイプの中に、専用の液体を真空状態で入れて密閉したもので、パイプの一端が受熱部、もう一端が放熱部になっています。受熱部に熱が入ると液体が蒸発し、蒸気が放熱部に流れて放熱、凝縮します。このとき、気液の体積変化によって蒸気が高速で流れるため、ヒートパイプは受熱部から放熱部まで素早く熱を移動させることができます。現在、モバイルデバイスやウェアラブルデバイスの開発を背景に、ヒートパイプの「超薄型化」を巡って国際的な研究開発競争が行われています。日本でも超薄型ヒートパイプの設計理論を構築すべく、実験と数値シミュレーションを駆使した研究が進められています。
発熱を気にしない自由な機器開発のために
熱問題はスマートフォンやパソコンに限った問題ではありません。AIチップや高速通信インフラ、データセンターに電気自動車、LED照明などでも熱対策が重要となっています。熱対策を省エネにつなげることもできます。ヒートパイプ研究の最終的な目標は、どのような場面でも素早く熱を移動させ、新しい機器の開発やイノベーションの扉を開くことです。熱問題が解決できれば機器の設計の自由度は飛躍的に高まります。発熱を気にしない自由な機器開発のために、ヒートパイプ研究が進められています。
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熊本大学 工学部 機械数理工学科 准教授 小糸 康志 先生
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