見えないものを見えるように 高次脳機能障害者の現状を数字で示す
高次脳機能障害を知っていますか
何かの原因で脳が損傷を受けたことで、昨日や今日の出来事をすぐに忘れてしまったり、言葉がうまく出てこなかったりといった症状が出る人がいます。これらは、損傷を受けた部位が担っていた機能がうまく働かなくなる、高次脳機能障害です。損傷を負う部位によって、障がいの内容やレベルも異なります。主に記憶障害や注意障害、失語症、遂行機能障害などがありますが、一つ大きな特徴があります。ケガや麻痺と違って目に見えないため周囲に理解されにくいことです。例えば遅刻やミスばかりする人に、周囲は思わず「しっかりしろよ」と言いたくなるでしょう。しかし本人も、なぜそうなるのかがわかりません。せっかく社会復帰しても周りの人や、ときに家族にも理解してもらえず、ストレスで心を病む人もいるのです。
傾向がわかれば対策ができる
例えば記憶障害のある人はメモをとる、時刻や予定を教えてくれるリマインダー機能のあるアプリを利用することで、記憶の欠落を補えます。また「聞く」「書く」という2つの動作が一度にできず、満足に授業が受けられない学生には、先生にあらかじめプリントを用意してもらう、板書の写真を撮らせてもらうなどの提案ができます。高次脳機能障害のリハビリには、周囲に障がいの内容やレベルをわかりやすく示すことも含まれます。周囲の理解を得るための社会的解決として、QOL(生活の質)を測る技術を応用する試みが始まっています。すでに健康面にフォーカスしたQOLを測る技術が開発されているので、それを高次脳機能障害の人のために応用するのです。すると現在の状態が数値に表れます。第三者にも対策の必要性を理解してもらいやすくなります。
みんなが生きやすく
体と違い、脳の障がいは程度が見えにくいのですが、QOLを指標に測定すれば、リハビリの効果も測れる可能性があるでしょう。なにより本人が本人らしく、そしてご家族も含めてより良い生活が望めるようになります。それこそが、作業療法士の行うリハビリテーションの目標なのです。
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先生情報 / 大学情報
藤田医科大学 保健衛生学部 リハビリテーション学科 作業療法専攻 教授 鈴木 めぐみ 先生
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