「高次脳機能障がい」を正確に判定するために

「高次脳機能障がい」を正確に判定するために

大ケガなどが引き起こす高次脳機能障がいとは

交通事故で頭部に大ケガなどをすると、後に障がいが残ることがあります。命に別状はなく、外傷も治ったけれども、以前の様子とはどこか違う。これは、注意や記憶などの認知機能を担う脳の前頭葉がダメージを受けた結果起こるもので、「高次脳機能障がい」と言います。
日々の身の回りの生活に必要なことは問題なくできるのに、複雑な仕事になるとうまくこなせなくなるのです。そのため周りの人の目には、急に注意力が散漫になったように映ることもあります。このような注意障がいの患者さんの症状を的確に調べるための研究が進んでいます。

数字とひらがなを結ぶテストでわかること

紙に1から20までバラバラな位置に数字を配置します。これを1の次は2、2の次は3といった要領で20まで順番に線で結んでもらいます。このテストは、高次脳機能障がいの患者さんもたいてい問題なくできます。ところが数字とひらがなを交互に結んでいくようなテストになると混乱するケースがあります。この作業を行うためには、数字・ひらがなのそれぞれに対して、注意を切り替えなければなりません。高次脳機能障がいの中でも注意障がいのある人は、このテストによって見つけだすことができるのです。

脳の電位でさらに正確に調べる

さらに脳波を電気生理学的に調べると、より詳しく脳内の状況がわかります。人がものごとを認識したり判断したりするとき、正常な場合は判断の0.3秒後ぐらいに出てくる脳波(事象関連電位)があります。認知症やパーキンソン病、あるいは高次脳機能障がいの患者さんは、この事象関連電位の出るタイミングが遅れるのです。例えば事故などを克服し、身体の具合も悪くないので仕事に復帰したが、いざ仕事をやってみると、なぜかささいなミスを繰り返してしまう。このような、自覚症状はないけれども、認知機能に障がいを受けて苦しんでいる患者さんは、まず的確に判定することが治療への第一歩なのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 教授 内藤 泰男 先生

大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 教授 内藤 泰男 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

脳科学、神経生理学

メッセージ

人は刺激を受けると、それが脳内で処理され、神経が命令を伝達することで体が動きます。「脳機能障がい」とは、この一連のプロセスに何らかの障がいが起こり、本来の動きができなくなることです。作業療法は、このプロセスに注目し、特別な器具を使わずにリハビリテーションを行います。ですから作業療法を行うためには、脳の仕組みについて学ぶことが必要です。大阪府立大学では脳科学の知識をベースに、作業療法に関する専門知識とリハビリテーションの手法を学ぶことができます。ぜひ、私と一緒に学びましょう。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。