加湿器から医療まで、さまざまに活躍する超音波

加湿器から医療まで、さまざまに活躍する超音波

周波数による音の違い

音は空気中であれば圧力の振動として伝わっていきます。1秒間に振動する回数を周波数と呼び、その単位はヘルツです。例えばピアノの一番高い音は約4千ヘルツです。さらに周波数が高くなって2万ヘルツを超えると、その音は人間には聞こえません。これを超音波と言います。
低い周波数では波長が長くなり、音は四方八方に広がりますが、高い周波数の音である超音波は波長が短く、レーザービームのようにまっすぐ進んでいきます。

身の回りにある超音波利用

身近に超音波が使われている例として、超音波式加湿器があります。これは水を加熱して沸騰させているわけではありません。水の入った容器の底に超音波スピーカーを置いて、水面に向けて超音波を出し、そのボリュームを上げていくと、水面が浮き上がってきて、表面から細かな霧が発生します。これは、超音波が水の微粒子をもぎ取って力学的に気化させているのです。また、スマホの中にもたくさんの超音波ベルが入っており、これらが鳴り響くことで(超音波なので聞こえませんが)、着信して通信できるようになります。

タンパク質の変異を加速する

医療分野でも、超音波の新たな応用が研究されています。アルツハイマー病は、その原因となる特定のタンパク質が長い時間をかけて変異して凝集し、蓄積することで引き起こされる病気です。早期に投与すれば効果のある治療薬が開発されている一方で、その早期診断の手段は確立されていません。体外で人工的にタンパク質を変異させようとしても、時間がかかってしまうことが課題でした。驚くべきことに、このタンパク質の入った液体に決まった音色の超音波を当てると、変異に要する時間が飛躍的に短縮されることが発見されました。そこで、体内から採取したタンパク質に超音波を当て、変異した時間を体内の速度に置き換えることで、発症リスクが診断できるのではないかと期待されています。

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先生情報 / 大学情報

大阪大学 工学部 応用自然科学科 物理工学科目 教授 荻 博次 先生

大阪大学 工学部 応用自然科学科 物理工学科目 教授 荻 博次 先生

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物理工学、タンパク質科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたがもし、今の段階でさまざまなことに興味を持っているのであれば、それだけでとても素晴らしいことだと思います。そして、自分が好きだと思うことが見つかったら、周りの流れに惑わされずに、自分のタイミングで、自分のペースでそれを深めていってください。
一方で、高校での勉強は、必ず何か良いことにつながるので、しっかりと学んでほしいと思います。興味を広げて好きなことを大切にしながら、基礎を固めて大学に学びに来てください。

先生への質問

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大阪大学に関心を持ったあなたは

自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。