手を使って脳を鍛える 脳のネットワークを再構築するリハビリの効果
脳の細胞が死んだら、治らない?
脳は人間のあらゆる活動をコントロールする司令塔です。運動、感覚、思考、記憶、心理などをつかさどる部分ごとに役割があることがわかっています。
病気やけがで脳がダメージを受けると、傷ついた部分によって、手足が不自由になったり、しゃべりにくくなったり、記憶に問題が生じたりと、さまざまな後遺症があらわれます。例えば、手の動きをつかさどる部分の脳の神経細胞(ニューロン)が死んでしまうと、麻痺が生じます。その麻痺を回復させるためには、手を使うことで脳のネットワークが変化し、損傷された神経細胞の回復を促したり、周囲の細胞が失った機能を代償できるように、脳の新しいネットワークを構築するリハビリを行います。
手を使って脳を鍛える
一度死んでしまった脳神経細胞は再生しませんが、細胞と細胞をつなぐシナプスは経験や学習によって、強くなったり、新しい回路を構築する可能性をもっています。この脳のネットワークが変わる可能性があることを「脳の可塑性(かそせい)」といいます。
しかし、手術や薬だけで脳の可塑性を高めることは難しく、リハビリ治療を併用することが重要です。特に作業療法でよく行われる手や指を使うリハビリは効果的です。その理由は、脳の表面の広い部分が手や指をコントロールするために働くことがわかっており、手を使うことで脳を刺激することが「脳の可塑性」を高めるために重要です。
脳とこころを活性化させる
脳の機能についてはまだわかっていないことも多く、リハビリが脳に与える影響についてさまざまな研究が行われています。例えば、こころの動きを探る心理学を取り入れて、神経心理学的課題を処理するときに脳のどの部分が活発に活動しているかを調べるような研究が行われています。このような、脳を活性化させるリハビリは、元気な人の認知症予防・介護予防にも役立つことが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 白濱 勲二 先生
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