なぞる、たたく、ぎゅっと押す? 新しい電子楽器が開く音楽の未来

なぞる、たたく、ぎゅっと押す? 新しい電子楽器が開く音楽の未来

アコースティック楽器と電子楽器

音楽演奏に使われる楽器には、ギターなど人間の加える力により直接的に音を作り出すアコースティック楽器のほかに、シンセサイザーやキーボードなど、電子回路によって音を作り出す電子楽器もあります。このようなデジタル技術を用いた楽器は今では広く認知され、さまざまな場面で活用されていますが、これまで多くの電子楽器では、それらを演奏するためのインタフェースとして、アコースティックな楽器とほぼ同じ操作手法が用いられてきました。そのため、従来の楽器演奏の技術を持ち合わせていない人には扱いづらいものでした。

柔らかな3Dタッチパッドを持つ楽器

電子楽器は、センサやスイッチなどの入力装置と、電子音源やスピーカーなどの出力装置を組み合わせれば、楽器として成立します。そこで、既存の楽器の概念にとらわれないインタフェースを持つ電子楽器や、楽器を扱った経験がない人でも気軽に演奏を楽しめるような電子楽器の研究が進められています。
例えば、「THE CELL MUSIC GEAR(CMG)」という電子楽器は、白く平らな筐体(きょうたい)に柔らかな3Dタッチパッドを搭載しています。内部にグリッド状に配置された16個のセンサは、一般的なタッチパネルのような平面上の情報だけでなく、タッチパッドを押し込んだ際の圧力も検知できます。このインタフェースにより、指でなぞる、押す、たたく、手のひらで全面を押すなどの多彩で感覚的な操作が可能になり、音の大小やピッチ、ハーモニー、エフェクトなどをより自由に表現できます。

ハードルを下げ、新しい音楽表現を育む

こうした新しい概念のインタフェースを持つ電子楽器は、楽器演奏の経験がない幼い子どもや、何らかの障がいがある人も、気軽にチャレンジできるハードルの低さを持ち合わせています。既成概念にとらわれないアイデアで作られた電子楽器の登場は、音楽の世界そのものの裾野を大きく広げ、まったく新しい感覚の音楽表現を育んでいくきっかけにもなり得るのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

フェリス女学院大学 音楽学部 音楽芸術学科 准教授 中西 宣人 先生

フェリス女学院大学 音楽学部 音楽芸術学科 准教授 中西 宣人 先生

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音楽芸術学

メッセージ

失敗をたくさん経験してみてください。私自身、ジャズのギタリストをめざして挫折を経験しましたし、現在研究している電子楽器の開発でも、うまくいかなくてボツになったデバイスがたくさんあります。
しかし、世の中の多くの物事は、そうした失敗の積み重ねによって成り立っています。失敗の数が、その先の成果につながっているのです。早いうちから失敗を経験して慣れておくと、ちょっとやそっとでは心が折れなくなり、失敗を契機とした新たなアイディアにつながっていきます。

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