『不思議の国のアリス』のウサギは、なぜ懐中時計を持っているの?

『不思議の国のアリス』のウサギは、なぜ懐中時計を持っているの?

小説を通して社会が見える!

文学研究と聞けば、作品を通して著者の思想や心情を考察するイメージを持っているかもしれません。しかし、それだけではなく、作品を通じてその小説が書かれた時代の社会を考えるのも重要な研究テーマのひとつです。
あなたは『不思議の国のアリス』を読んだことはありますか? この作品は19世紀のイギリスでルイス・キャロルによって書かれた童話であり、今日では単なる子ども向けのファンタジー小説だと思われがちです。しかし、細かく分析すると、この作品が当時のイギリスにおける「アッパー・ミドル(貴族ではないが、中流階級の上位層の人々)」と呼ばれる社会階級の視点に基づいていることがわかります。

アリスは上流意識の持ち主?

『不思議の国のアリス』は、主人公の少女アリスが突然出会ったウサギに導かれて、不思議の国に旅立つところから物語が始まります。原作の挿絵ではこのウサギはツイードのジャケットを着て傘と懐中時計を持っている姿で描かれていますが、これは当時のミドル・クラス層が仲間入りを果たした、ジェントルマン(イギリスの支配階級)の典型的なファッションと一致します。また、アリスは巻き髪の友だちには好意的ですが、一方で家が小さく、オモチャをあまり持っていない友だちに対してはあまり好意を抱いていません。実はこの巻き髪もまた、当時アッパー・ミドル以上の階級に生まれた女性のファッションなのです。

「なぜ?」から始まる文学研究

文学作品には物語そのものを味わう楽しさがあります。加えて、その作品が書かれた時代の歴史的な背景を知ると、新たな読み方が可能となり、物語を二重、三重に楽しむことができます。
「ウサギなら裸でもいいはずなのに、なぜ服を着て時計を持って登場したのか?」「なぜアリスは巻き髪の友だちに好意的なのか?」、作品を読みながら感じた、そんな「なぜ」を追究することは、物語をより深く楽しむと同時に、文学研究の重要な第一歩にもなるのです。

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フェリス女学院大学 グローバル教養学部 文化表現学科  ヨーロッパ・アメリカ専攻  ※2025年4月開設 教授 向井 秀忠 先生

フェリス女学院大学 グローバル教養学部 文化表現学科 ヨーロッパ・アメリカ専攻 ※2025年4月開設 教授 向井 秀忠 先生

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英米文学、文学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学の英文学科では、じゅうぶんなコミュニケーションをとることができる英語力を身につけるだけでなく、英語圏の国々の社会や文化などを専門的に学び、異文化の理解に努めます。
私の専門はイギリスの小説です。大学で文学を学ぶことは、単に作品を楽しむだけではありません。作家や作品についてより深く調べ、考えることで、自分を取り巻く世界そのものを見直すという、とてもスリリングな経験でもあるのです。さあ、あなたもイギリスの文学を学びませんか。

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創立者メアリー・E・キダーは、明治期に女子教育を行うという目標に果敢に取り組みました。フェリス女学院大学で、あなたらしい目標を探してチャレンジしてみませんか?