「差別は駄目、私には関係ないけど」という意識がもたらすもの
日本のマイノリティ
日本には在日外国人やセクシュアルマイノリティ、心身に障害のある人、被差別部落出身者、貧困家庭といった多種多様な「マイノリティ」が暮らしており、彼・彼女らはその属性やバックグラウンドを理由に社会から差別・排除されてきました。こうした問題を「差別をする悪い人の問題」と「個人化」する向きもありますが、例えばアメリカで建国から今日まで黒人差別が繰り返されていることからもわかるように、差別や排除の要因は「社会の構造」にこそあります。「マイノリティスタディーズ」という研究分野では、こうした視点からマイノリティ問題を横断的にとらえ、誰もが平等に生きられる道筋を考えます。
障害は皮膚の外にある
例えば、階段しかない建物では、車いすで2階に上がることができません。これに対して「車いすの人が自分で何とかすべき」「治療して歩けるようになればいい」とする考え方を「障害の個人モデル(医療モデル)」といいます。一方、「障害は皮膚(個人)の外にある」とする捉え方を「障害の社会モデル」といい、この場合個人ではなく建物に障害が宿っていると考えます。こうした考え方は、障害だけでなく、あらゆるマイノリティへの差別・排除を考える際にも、応用することができます。
マジョリティの問題として
「障害の社会モデル」は、当事者による長年の運動によって確立し、理解されるようになってきました。しかし、これまでのわずかな進展にも膨大な時間がかかり、また民族差別や性差別といった問題に今も多くの当事者が苦しめられ、かかわらざるを得ない現状にあります。上でも述べたように、この社会の仕組み、慣習、常識、制度といった構造をつくり支えているマジョリティの変革なくして、問題の解決はありえません。差別や排除の現実を知って「かわいそう」「でも私の人生とは関係がない」と切り捨てることができる、マジョリティとしての自分自身の地位に気づくこと。誰もが平等に暮らせる共生社会を築いていく第一歩は、そこから始まります。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 地域学部 地域学科 人間形成コース 准教授 呉 永鎬 先生
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