ゲーム感覚で職人の作業が学べるVR・MR技術
建設業の課題
現在、建設業は深刻な人手不足に直面しています。建築作業を担う職人は、1997年から2020年の間に約30%も減少し、2025年には建設業界の労働力が約90万人不足すると予想されています。このため若手の人材育成が緊急の課題ですが、現役の職人は人手不足の中で忙しく働いており、育成に時間を割くことができません。この課題解消のために、仮想現実の技術であるVRやMRの活用が研究されています。MRは、拡張現実のARと、仮想空間を疑似体験できるVRを組み合わせた技術です。
VR・MRを活用した教育
鉄筋コンクリート造の建築では、コンクリートを流し込む前に鉄筋を組み立てます。この作業に携わる鉄筋工の育成では、鉄筋を組み立てる課題があり、その課題に対してヘッドマウントディスプレイを使ったVRやMRによる仮想現実の教育プログラムが開発されました。ヘッドマウントディスプレイを装着すると、目の前に鉄筋が現れて、実際の作業と同様に1本ずつつかんで組み立てることができます。この作業を実物の鉄筋で行うと3時間ほどかかりますが、仮想空間での体験では15分ほどで完了するため、繰り返し練習しやすいというメリットがあります。鉄筋の組み立てには、手順の習得と正確な位置に置くことが求められます。仮想空間の中で、ゲーム感覚で手順を覚えてしまえば、実物の鉄筋を用いた練習では、鉄筋を正確な位置に置くことに集中できます。
教育プログラムを作るには
仮想現実での教育は、指導者が近くにいないことも多いため、効果的な教育プログラムを作る必要があります。そのためには、受講者にあらかじめ評価基準と優先的に学習しなければならない内容を提示し、それらを意識して受講してもらうことが大切です。評価基準などの抽出にはベテラン職人の作業を調査し、作業手順やよく使う作業などを記録することが重要です。
このような仮想現実の活用と教育プログラムの作成は、建設業界の人材不足の解消と技能の向上を図り、建設業の持続に貢献することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
職業能力開発総合大学校 総合課程 建築専攻 准教授 舩木 裕之 先生
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