XR空間と現実を繋ぐ 大型ディスプレイの「窓」

XR空間と現実を繋ぐ 大型ディスプレイの「窓」

ヘッドマウントディスプレイは重すぎる

近年、ゲームやエンターテインメント分野を中心に、「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」といった概念が広がり、その技術も急速に進歩しました。これらの新しい仮想体験を作り出す技術を総称して「XR(クロスリアリティ/エクステンデッドリアリティ)」と呼びます。XRでは、一般的に没入感を得やすい「ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)」を装着して仮想空間に入ります。ただ、現在のHMDは重量が400g~1kgもあり、頭を覆う装着感が疲れやすく、特有の「VR酔い」を引き起こすといった問題が指摘されています。

大型ディスプレイでの仮想空間へのアクセス

仮想空間へのアクセス方法として、大型ディスプレイをメタバース空間につながる「窓」のように使用する方法もあります。これは、ディスプレイの正面にいるユーザーの目の位置情報から計算し、その人の目線にとって違和感のない3D空間を計算して表示するものです。これにより、まるでディスプレイの先に仮想空間が広がっているような体験をすることができます。中の様子を眺めるだけでなく、実際にメタバース空間内の人物(アバター)と双方向にコミュニケーションを取ることもできます。

現実と仮想現実を滑らかに行き来する

この仕組みを使用して、現実とメタバースを融合した空間の開発も行われています。これはテレビの情報伝達とは異なり、仮想空間と自分のいる現実が地続きのまま双方向にコミュニケーションができる点で、今までにない新しい体験となります。また、HMDで仮想現実に没入しすぎると、現実に戻った時の仮想空間との差異にショックを受け、うつ状態になってしまう人もいます。しかし、このディスプレイでのアクセスなら、「自分がこの現実世界に確実にいる」と理解したうえで別世界にアクセスできます。現実の自分を認識したまま仮想世界を楽しみ、滑らかに現実に戻ることができるため、メタバース空間への新しいアクセス方法の一つとして研究が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

久留米工業大学 工学部 情報ネットワーク工学科 准教授 工藤 達郎 先生

久留米工業大学 工学部 情報ネットワーク工学科 准教授 工藤 達郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私がXRの分野に興味を持ったのは、「この技術を使えば小説や映画の世界の体験を現実のものにできる」と感じたことがきっかけでした。現在もXRのテクノロジーは目まぐるしい成長を遂げており、あなたが学ぶ頃には仮想空間のクオリティはさらに現実に近いものとなっていることでしょう。私はメディアクリエイターとして作品の発表も行っているので、あなたと一緒にさまざまなクリエイションを学び、実際に体験できる作品づくりを通じてXRの魅力を伝えていきたいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

久留米工業大学に関心を持ったあなたは

久留米工業大学は「人間味豊かな産業人の育成」を目指して、「実践的なものづくり教育」を進め、「ものづくりの楽しさ」を発信し続けています。さらに、ものづくりの実践教育の充実を図るため、ものづくりセンターを中心に、学科の垣根を越えて全学的な取り組みを実施しています。 本学は、小規模大学である特色を生かし、学生一人ひとりと教職員がお互いの顔がよく見えるアットホームな雰囲気の中できめ細かな教育を行い、実践的なものづくり能力を養成するための科目を多く設けています。