脱炭素社会の実現をめざした住宅建築
家庭での省エネ化が急務
太陽光発電などでつくったエネルギーをその家庭で消費して、実質的にエネルギーの収支をゼロにする家のことを「ゼロ・エネルギー・ハウス」といいます。2016年ごろから大手ハウスメーカーなどが導入して、2025年度からは全新築住宅の建設で取り入れることが義務化されます。
これを実現するには、エネルギー消費量を約30%削減する必要があります。家の断熱性や気密性といった設備の効率を高めて電力の使い方を工夫することが求められます。各家庭によって家族構成やライフスタイルは多様です。それぞれのパターン別に、効率のよいスタイルは何かを導いて提示することが急務となっています。
昼間の発電をフル活用する
太陽光発電のデメリットは、家に人がいない昼間に多く発電することです。余った電力は売ることができますが、売電には期限があり、2019年ごろから売ることができない家庭が増えつつあります。昼間に発電したエネルギーをいかに使いこなすかという課題があるのです。
例えば、帰宅前や夕方ごろからあらかじめ部屋を冷暖房するように設定すると、夜の冷暖房による消費量を減らすことができます。また、夜も発電できるガス発電を利用するダブル発電が有効なケースもあります。使わなかった電力を蓄電器にためておくことも有効でしょう。ただし、その経済的な負担を考慮することも大切です。
こうした住宅は災害に強いといえます。自宅で発電できれば、在宅避難できる可能性が高まるでしょう。
ビルや古民家も脱炭素化へ
建築に関する省エネ基準は住宅だけでなく、オフィスビルなどの非住宅にも義務付けられています。これらは、脱炭素社会の実現に向けて不可欠な取り組みです。また、古い住宅ではリフォームで実現できます。文化財に指定されている京町家においても、伝統的な外観や土壁などを残して、居住空間のみを改修して省エネで快適な場所をつくることもできるでしょう。最新の技術や設備を活用して、脱炭素社会や伝統的な建築物の維持に貢献できるのです。
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京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 助教 金 ジョンミン 先生
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