講義No.13212 建築学

建築の設計者は、どのように空間を設計しているのか?

建築の設計者は、どのように空間を設計しているのか?

設計プロセスを解き明かす

建築計画では、建物の設計に先立ってさまざまな条件を整理し、建物の機能や設計の進め方を検討します。そして建築設計では、設計条件に従って建物の空間構成・デザインを立案します。建築設計の方法は個人によって異なり、従来は、設計を学ぶ時は「見て覚える」しかありませんでした。建築設計方法の研究では、プロの設計者の思考やプロセスを明らかにして、建築を学ぶ学生に設計方法をわかりやすく伝えることを目的として設計の進め方やその技能について研究しています。

空間同士のつながりが大事

例えば、住宅ではリビングとダイニングをつなげて一つの空間にするのか、空間を分けるのかでは機能的な面、あるいは空間から受ける印象が大きく変わります。設計者は、複数の空間においてその使い方をイメージするだけではなく、使う人の感情までも設計しています。良い建物を設計するには、空間を「つくる」と「つなぐ」を同時に行うことが重要です。空間を「つくる」とは、空間の大きさや形、色などを決定することです。一方、「つなぐ」とは、リビングとダイニングなど空間の関係性を考えて配置することです。空間を「つくる」と「つなぐ」は連続しており、行ったり来たりしながら設計は進められます。

プロの設計者と学生の思考を分析

研究では、プロの設計者と学生にそれぞれスケッチを描いてもらい、スケール感や空間のつながりなどの空間認識力を比較する調査が行われました。学生はそれらの認識力が弱い傾向にありますが、プロの設計者は、描いているスケッチの外側の空間を認識したり、正確なスケール感で連続性のある空間を設計していることが明らかになりました。
また、学生が「3D CAD(設計支援ツール)」を使用することでスケール感を補完できるのではないかという仮説も検証されています。3D CADでは、平面図よりも立体的な大きさを適正に判断できることを利用し、空間スケール感を養成するための設計教育ツールとして役立つと考えられています。

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職業能力開発総合大学校 総合課程 建築専攻 教授 和田 浩一 先生

職業能力開発総合大学校 総合課程 建築専攻 教授 和田 浩一 先生

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建築学

メッセージ

私の研究のきっかけは、ある建築家の「建築に命を吹き込む」という言葉でした。具体的にどのような設計方法なのか知りたくなったのです。建築学には芸術・デザインが含まれ、美しいものへの理解や物語を作る能力など文系的なセンスも必要です。自分だけが良い設計だと思っても独りよがりになり、他人とその良さを共有できないと高い評価の設計にはなりません。そのために、日ごろから名建築をたくさん見て、どこが美しいのか、なぜ心地よいのか自己分析して、建物やインテリアを見る目を養いましょう。

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職業能力開発総合大学校は、「ものづくりのプロ」「人づくりのプロ」を養成するために設置された、厚生労働省所管の4年制の大学校です。
科学・技術・技能を三本柱とした実践的な知識と技能を学び、機械・電気・電子情報・建築の4専攻でものづくりにおける企画・開発から製品化に至るまでをトータルにマネジメントできる能力を養います。製造現場での最先端の機器設備を活用することによって、新たな学術領域である「技能科学」の確立を目指すとともに高度化・煩雑化する社会課題を解決できる高度な人材を育成しています。