競技者の主観と動きの客観的評価を合わせた新しいスポーツコーチング
スポーツバイオメカニクスによる「動き」の測定
スポーツをする人は、指導者からのコーチングを受けて、それを実際に試して動きを習得します。しかし、自分の主観的な動きのイメージと実際の動きにはズレが生じます。腕が何センチ伸びているのか、肘や手首の角度はどれくらいなのかなど、細かな動きを実際に測定できるのが「スポーツバイオメカニクス」です。この技術は、スポーツの指導に限らず、エンターテイメントや医療・リハビリテーションの分野でも活用されています。将来的には、その人に向いているスポーツを調べることも可能になるかもしれません。
動きに対する主観的イメージを改めて評価する
競技者は、動きについて指導を受けてもピンと来ないことがあります。また、理解できたと思って試してみても、イメージを動きに正しく反映させられないこともあります。まずはそうした競技者に、自分なりの主観的な理解について自分で点数をつけて評価してもらいます。練習後に改めて主観的に評価すると、動きに対する理解度がどの程度変わったかが見えるようになります。さらに、自分の動きを動画に撮って確認するなどの工夫を行ったグループは、競技者自身の動きに対するイメージが鮮明になり、上達が早まる傾向も見られました。この方法でうまくいかなかった場合も、動きの改善やイメージの気づきを得ているということもわかってきました。
「なぜその動きになるのか」を測り指導に生かす
この主観的な評価と、スポーツバイオメカニクスによる客観的な動きの測定結果を合わせて分析することで、多くのことが見えてきます。なぜその動きになるのか、なぜその動きを選ぶのか、何によって選択が変わるのか。選択の要因は技術の理解度か、体格的な要因か、筋力的な要因か、そういった今まで見えてこなかったものが、これらの技術によって見えるようになってきます。
この研究は、個々人に最適化されたスポーツ指導のあり方についても示唆を与えています。客観的に競技者の動きのデータを取る技術と、主観的な評価を合わせることにより、スポーツのコーチングは新たな局面を迎えています。
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先生情報 / 大学情報
静岡産業大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科 准教授 宮崎 彰吾 先生
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