アルツハイマー病を根本的に治療する薬はできないか?
アルツハイマー病の薬開発
認知症の代表的な原因はアルツハイマー病です。認知症の進行を止めるためには、アルツハイマー病特有の炎症に効く治療薬が必要です。多くの病気では、体内の細胞が病気と過剰に戦うことが問題視されています。その結果、熱などの炎症で体が疲れ切ってしまい、自滅に似た状態になってしまうのです。アルツハイマー病でも脳内の異常を治そうと細胞が激しく戦い、炎症反応が起きています。
細胞の暴走を止めるには
細胞が病気と戦うのは大切な機能ですが、暴走してしまうと炎症に発展します。脳内で起こる炎症を薬で制御できれば、アルツハイマー病の根本的な治療につながる可能性があります。脳内で損傷が起きるとミクログリアという細胞が集まり、老廃物や細胞の死骸を食べて掃除をします。ただし掃除後にまた別のタンパク質が出る点が問題です。このタンパク質は少量ならば悪影響はありませんが、過度に放出されるとゴミになってしまいます。アルツハイマー病ではミクログリアが暴走し、ゴミを掃除しようとして新たなゴミを大量に出し続ける悪循環に陥っている可能性があるのです。
脳に薬を届かせるのは難しい?
脳に効く薬を作るためには、主に2つの課題を解決する必要があります。1つ目は「血液脳関門」というバリアを突破することです。脳は普段、細菌などが入らないように血液脳関門で防御しています。このバリアを乗り越えられる性質を持つ化合物を使わなければ、薬を脳まで届けることができません。2つ目の課題は、薬を脳に集中させることです。多くの薬は首から下に効きやすく、吐き気や心拍数の上昇のような副作用をもたらします。脳に集中的に効くように薬をデザインすれば、副作用を抑えることが可能です。
こうした薬に使用する化合物の候補は、食べ物など天然の素材から発見され始めています。自然の中には、人間が開発できないすぐれた機能を持つ化合物がたくさんあり、これらを生かした薬の開発が期待されています。
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武蔵野大学 薬学部 薬学科 教授 阿部 和穂 先生
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