エスニック・ビジネスが地域活性化の呼び水になる

多文化共生社会を考える
日本に暮らす外国人の数は、1990年頃には約100万人でしたが、2024年には350万人を超えています。それにともなって大小さまざまな問題も生じていますが、行政や人々の認識が状況の変化に対応できていない点が指摘されています。都市社会学という学問では、現場でインタビューなどを行う定性的な調査や、統計のような定量的データを用いた研究を行い、多文化共生が進みつつある現代社会が抱えている課題について考えていきます。
西川口チャイナタウンの誕生
埼玉県川口市の西川口駅周辺には2010年頃からチャイナタウンが広がり、本格的な中華料理を味わえる街として人気を集めています。この西川口チャイナタウンの誕生は、川口市の歴史と深い関わりがあります。
川口市はもともと首都圏のベッドタウンとして発展し、80年代から90年代にかけて、西川口駅周辺は歓楽街として栄えていました。ところが2000年代に入ると、埼玉県警や行政による摘発が相次ぎ、空きテナントが増えて駅周辺がゴーストタウンと化します。その後、空きテナントに注目した中国人が入居してエスニック・ビジネスを起業していったことで、チャイナタウンが発展していきました。中華料理店の人気が呼び水となり、地域経済も息を吹き返すなど、街全体にも好影響を与えています。
外国人の起業家精神
外国人居住者の急増によって、西川口チャイナタウンのようなエスニックタウンが各地で形成されるようになりました。外国人たちは料理店や物産店などさまざまな店舗を開き、エスニック・ビジネスを通じて経済基盤を確立し、地域社会に参加する担い手の一人として日本で生きていこうとしています。
こうした人たちが、その土地で起業することを選んだ経緯や、外国人の起こしたビジネスが地域経済や社会に与える影響の研究が進められています。その手掛かりの一つは、起業家の考えや事業展開の仕方について考える「アントレプレナーシップ(起業家精神)」の視点です。
参考資料
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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 アントレプレナーシップ学科 准教授高松 宏弥 先生
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エスニシティ論、人文地理学、都市社会学先生が目指すSDGs
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