講義No.11157 生物学

地球と進化を知りたくば、単細胞から!

地球と進化を知りたくば、単細胞から!

地球環境を支える、小さくて大きな存在

海には1ミリより小さい藻類や繊毛虫など、多種多様な単細胞の生物がたくさん存在し、中には貝のように「殻」を作る種類もいます。こうした「単細胞真核生物」は、食物連鎖の基盤となっており、さらに地球上の二酸化炭素を利用して地球全体の環境を大きく左右する、非常に重要な存在です。ところが、海はとても広大なので、単細胞真核生物は何種類くらいいるのか、どのように進化してきたのか、どんな機能を持っているかなど、あまり詳しくわかっていません。遺伝子の解析によって単細胞真核生物の多様性や機能を調べ、地球環境の歴史の中でどのように進化してきたのかなどを研究したりするのが、「分子古生物学」という学問領域です。

実は人間の大先輩で地球史の目撃者

単細胞真核生物は、約20億年前に海の中で出現した人間や動植物の大先輩です。太古の昔に動植物が持つさまざまな基本的な機能(例えば光合成や餌を食べるなど)を獲得していました。そして魚のように泳いで移動する能力を持たないのに、世界の海の至る所にすんでいます。単細胞真核生物の進化や機能にもとづく生存戦略を知ることは、まさに「生命の誕生と多様性」の謎に迫る研究ジャンルだと言えます。

効果的な環境対策や生命の保護が可能に

国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」により、二酸化炭素などの増加による地球温暖化や、マイクロプラスチックによる海洋汚染など、環境問題に対する意識は着実に高まっています。地球全体の環境や生態系の基盤である単細胞生物の研究は、環境・生態系を守るために「何が鍵であるか」を見つけ、より効果的な環境対策につなげることができます。また、マイクロプラスチックのような汚染物質が生物に及ぼす影響は、未だによくわかっていません。一方で、汚染物質を取り込んだ単細胞真核生物は、ストレス反応を起こしつつも、それを体外に排出しようとすることがわかってきました。こうした生物としての機能を解明することで、医学や環境浄化などに役立てられると期待されています。

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先生情報 / 大学情報

高知大学 理工学部・海洋コア総合研究センター 生物科学科 准教授 氏家 由利香 先生

高知大学 理工学部・海洋コア総合研究センター 生物科学科 准教授 氏家 由利香 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

分子古生物学、分子生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたを取り巻く自然や生物について、どのように成り立ち、関係しているのか考えてみませんか?自然、特に海の科学は、まだわからないことがたくさんあります。教科書の知識だけでなく、あなたの好奇心を合わせて「なぜ」を調べていくことにより、新しい発見があるでしょう。また、自然科学の勉強や研究で培われた「考え方」や「実行する力」は、科学の分野だけでなく、物の作成や手法の開発、物事の運営など、多方面で発揮されるかもしれません。大学でたくさんの興味と新しい知識をもって、自然の秘密を探っていけると良いですね。

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高知大学は、四国山地から南海トラフに至るまでの地球環境を眼下に収め「地域から世界へ、世界から地域へ」を標語に、現場主義の精神に立脚し、地域との協働を基盤とした、人と環境が調和のとれた安全・安心で持続可能な社会の構築を志向する総合大学として教育研究活動を展開しています。
教養教育、専門教育、正課外教育やインターンシップを通じ「表現力」「プレゼンテーション能力」「コミュニケーション能力」「異文化理解能力」「情報活用能力」の5つの能力で社会の力になる21世紀の知識創造社会で活躍できる人材を輩出します。