何を知りたい? データの価値と可能性

何を知りたい? データの価値と可能性

リアルタイムで把握したい

景気動向を判断する上で、最も重要なデータの一つがGDP(国内総生産)です。中でも内閣府が公表する3カ月ごとのGDP成長率の速報値は、経済動向を反映する最新の値として高い関心を集めます。一方で、この速報値は様々なデータをもとに作成されるため、速報値とはいえ公表までに約1カ月半を要します。公的なデータとしての正確性を担保するためのタイムラグですが、政策やビジネスの現場では、速やかな意思決定を迫られる中、「リアルタイムで経済動向を把握したい」という課題を抱えています。

「ナウキャスト」とは

そこで近年注目されるのが、「ナウキャスト」というデータ分析手法です。これは経済の変化を反映して日々公表される最新のデータを組み合わせて、GDP成長率などをリアルタイムで予測する技術です。データが更新されるたび、経済の”今”を反映し予測も柔軟に見直されるのが特徴です。消費動向や輸出入などの公的データだけでなく、クレジットカードの利用やスマホの位置情報といったデータも活用することで、現在進行形で起こっている経済の変化をよりタイムリーにとらえることができるようになりました。こうしたナウキャストと、景気判断に関する政府の公式見解には関連性も見られています。

データが価値を持つには

近年ではデジタル技術の進展に伴い、入手できるデータの種類が大きく広がりました。ICカードの利用履歴やSNSの投稿など、人々の行動や意識を細やかに映し出す情報が蓄積されています。こうしたデータを上手く活用すれば、人々の移動や抱くトレンドの変化など、従来の公的データでは追い切れなかった現象も可視化されます。
ただし、大切なのは単にデータを集めることではなく、「何を知りたいか」という問いです。その問いに応えるデータを選び、分析を通じて読み解いていくのです。そうした分析結果は、国の政策立案や企業の意思決定にも活かされます。社会の行動を後押しする力になったときこそ、データが本当に「価値」を持ったと言えるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神奈川大学 経済学部 経済データ分析学科 ※2026年4月開設 教授 浦沢 聡士 先生

神奈川大学経済学部 経済データ分析学科 ※2026年4月開設 教授浦沢 聡士 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

景気循環論、GDPナウキャスティング

先生が目指すSDGs

メッセージ

身の回りで起きている出来事に、「なぜ?」と問いを立ててみてください。ラーメンの値段やアルバイトの時給が上がった、外国人旅行者がどんどん増えているなど、日常の変化に目を向けることが、経済を学ぶ出発点になります。データ分析は、データを用いることで、そうした「なぜ?」への答えを導いてくれます。「データ分析には数学の知識が必須では」と苦手意識を持つ人も、まずは周囲の出来事に関心を持つことから始めてみましょう。社会の仕組みを知りたいという気持ちがあれば、大学での学びは確実に広がります。

神奈川大学に関心を持ったあなたは

1928年創立以来、真の実学をめざし、自ら成長できる人材を育成してきました。近年では2021年、経営、外国語、国際日本のグローバル系3学部が集うみなとみらいキャンパスを開設。2022年に「建築学部」を開設、2023年に理工系学部を改組再編し「化学生命学部、情報学部」を開設。これにより文理11学部が横浜エリアに集結し、新たな一歩を踏み出しました。また返還不要の奨学金制度も充実。毎年12月下旬に全国23会場で実施している給費生試験で給費生合格、入学すると4年間で最大920万円の奨学金が給付されます。