脳や筋肉の信号を使い、“機械の手”を動かそう
筋肉は電気信号で動く
人間は体を動かそうとするとき、脳から指令を発し、運動に関係した筋肉を収縮させます。その際、実は微量の電気信号が発生しています。例えば電気信号の波が荒いと指、細かければ手首というように、動かす筋肉により電気信号の波の形や電圧が異なるため、これをセンサーで感知すれば、どの筋肉がどういう運動をするかを推測できます。この電気信号を利用してモーターを動かせば、体の動きに対応した義手(筋電義手)などを作ることができます。
電気信号を使い運動機能回復
筋肉は年齢を追うにつれて太くなり、力も強くなっていくのですが、6~8歳で力を必要以上に出すことなく、適当に加減してコントロールできるようになります。こうした電気信号と連動した義手を使用する場合、若年時から装着して訓練した方が、より自由に扱えるようになります。脳は信号が返ってくる場所とつながろうとします。そのため、逆に電気信号を人為的に与えていくと、脳がその機能を学習します。細かな手先のコントロールを習得する前に、腕自体を動かすトレーニングをした方が、脳が義手を「腕」として認識する可能性が高くなります。これを利用すると、脳卒中を起こした人が体の機能を回復するためのリハビリテーションに使うこともできるのです。
脳と機械の融合でできること
脳と機械の融合を突き詰めていけば、「脳波で車椅子を操作する」「脳からの電気信号によりロボットを動かす」といったことも可能です。また信号パターンを背中やお腹など別の筋肉に覚えさせれば、本来は無いものを有るようにすることも、例えば義手を「3本目の腕」として動かせるようにもなります。
ただし脳が運動に使える領域は限られているため、指先ばかりを頻繁に使うと、肩の機能が落ちていくのと同じように3本の腕を同時に動かそうとすれば、それぞれの精度や力は落ち、あるいは従来、物事を判断するために使っていた脳の領域に影響が出る可能性もあります。しかし、脳と機械の融合は、未来のさまざまな可能性を秘めた研究分野なのです。
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