体温で発電できる素材がわたしたちの未来を変える
廃棄されている「熱」から発電できる素材
身の回りにある排熱を電気に変えて、エネルギーを有効利用できるようになったら便利だと思いませんか? 世の中には工場の排熱など、廃棄されている熱源がたくさんあります。そういった無駄になってしまっているエネルギーを電気に変換する技術が「環境発電」です。現在は大気中に放出してしまっている熱エネルギーを活用する技術ですから、環境に優しく持続可能性も期待できるでしょう。この技術が進めば、コンセントや電池に加えて、新たな電源が実用化されることになり、ゆくゆくは身につけているだけで体温から発電されるデバイスなども可能になるかもしれません。
柔軟性を持った発電素子
現在、IoT(モノのインターネット)社会の実現に向けて、さまざまな無線センサ向けの電源の研究が進んでいます。医療向けであれば、例えば体に発電素子のついたセンサを貼って心拍をモニターし、スマートフォンなどの外部機器にデータを送るなどの活用が期待できます。体温から電源を取れれば、煩わしい配線や電池から解放され、24時間気軽に健康のモニタリングが可能になります。しかし、現状の技術では、良い素材が見つかっていないため、柔軟性が乏しかったり、体に貼るといった用途には不向きです。化学の学問から新しい素材の研究が進めば、インクのように印刷ができて、塗って乾かすだけで作製できる便利な発電デバイスが実現すると期待されています。
コスト面も優れた持続可能な素材へ
実用化のためには、コスト面も重要な要素です。IoT社会では膨大な数の無線センサが利用されると予測されていますし、安価でなければ本格的な普及は難しくなるでしょう。また、すでに存在する太陽電池やボタン電池などとの競合も視野に入れた「新素材」の開発が必要です。これらの点をクリアできれば、社会インフラに支障が出るような災害が起こった際も、体温で通信手段が確保できるなど活用の幅が広がります。この技術は、わたしたちが直面している災害に強い社会づくりにも大きく貢献することができます。
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大阪工業大学 工学部 応用化学科 准教授 村田 理尚 先生
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