有害な紫外線をカットし、発電もする窓ガラスとは

有害な紫外線をカットし、発電もする窓ガラスとは

透明太陽電池とは

再生可能エネルギー、省エネルギーや環境保全に役立つ新しいデバイス(電子素子・機器)や材料の研究開発が進んでいます。その一つとして注目されているのが「透明太陽電池」です。太陽光に含まれる近紫外光の「UVA」はガラス窓を透過して肌の老化や家具・内装・書類の劣化を引き起こします。この「透明太陽電池」は、有害な近紫外光をカットしつつ発電もできる新しいタイプの太陽電池で、これをビル、住宅や自動車の窓ガラスなどに組み込んで、発電や省エネルギーに活用することをめざしたものです。

透明太陽電池の構造

透明太陽電池は、窓ガラスタイプを想定した場合、(1)ガラス(基板)/(2)透明導電層/(3)透明半導体層/(4)透明導電性高分子層、という4つの層で構成されます。(1)ガラスから入った太陽光は、(2)透明導電層を透過して、(3)透明半導体層を通ります。このとき太陽光の中の近紫外光が吸収され、ここで「電気のもと」である電子(マイナス)と正孔(プラス)が発生します。次の(4)透明導電性高分子層は、(3)透明半導体層と接合させることで、電気的なエネルギーの勾配(坂道)を作り、電子と正孔を外側に押し出す役目を担います。この構造によって、太陽光を吸収して、透明半導体層で発生した電子と正孔は、電流となって外部に取り出すことができるのです。

透明太陽電池開発のチャレンジと将来展望

透明太陽電池の開発でチャレンジとなるのは、それぞれの材料がベストな特性を発揮するように開発することだけでなく、それらの組み合わせによって起きる新たな問題も一つ一つ解決しながら、全体として開発しなければならないというところです。そのため、材料科学や電子工学など多角的な学術的見地からアプローチする必要があります。
透明太陽電池が実用化すれば、ビル、住宅、温室、自動車、広告掲示板、スマートフォン、腕時計、スマートグラス(めがね)など、透明な部分に広く適用して、発電や省エネルギーに貢献することができるようになるでしょう。

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神奈川大学 工学部 電気電子情報工学科 准教授 松木 伸行 先生

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物理学、化学、電子工学、材料科学

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メッセージ

人生はオンリーワンス、たった一度だけ―この中学校時代の恩師の言葉は、いまでも私が自分の生き方を考える上でのキーフレーズとなっています。一度きりの人生で、いかにして「私が生きた証」を刻んでいけるでしょうか。社会人となってから、単に業務をこなすだけではなく、仕事に自身で創造したものを吹き込めれば、それは「私が生きた証」となり人生がより充実するでしょう。そして、それを可能にするためには、高校・大学において自ら学ぶ力・自ら考える力・創造力を養うこと、幅広い知識や経験を得ることが必要不可欠です。

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1928年創立以来、真の実学をめざし、自ら成長できる人材を育成してきました。近年では2021年、グローバル系3学部が集うみなとみらいキャンパスが誕生。2022年、「建築学部」を開設、2023年には理工学部を改組し「化学生命、情報学部」を開設。文理11学部すべてを横浜エリアに集結させ、世界レベルをめざす総合大学として、新たな一歩を踏み出しました。
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