「言葉」より、「行為」を重視する、「鏡の文化」の中の日本人
西欧人は「積極的」、日本人は「消極的」?
自分の意見を積極的に表明する西欧人はいかにも自信があるように見えます。一方、日本人はおとなしく自分の意見を言うのが苦手で、消極的で自信がなさそうに見えます。これは本当でしょうか? 日本人特有の行儀作法、若い人の間ではやっている「自撮り」「ゆるキャラ」「コスプレ」などを見ると、日本人も決して消極的でなく、自信を持っているように見えます。
これは、両者が重視する「表現」が違うのです。西欧人は言葉を、日本人は行為を重視しています。西欧人の側に立てば、日本人が消極的に見えるのです。
西欧人は「言葉」、日本人は「行為」を重視
西欧人が言葉を重視するのは、キリスト教文化だからです。聖書に「はじめに言葉ありき」という語句があります。世界の始まりは言葉であり、言葉が世界を作っています。それに対して肉体は醜悪で見たくないものと考えています。
日本人は違います。自分の姿を見ることは、「自撮り」でもわかるように苦ではありません。それだけなく、自分の姿や行動がどう見えるかに価値を置いています。これは、「鏡の文化」と言えるかもしれません。西欧人は自信と人物に対する評価が合致しています。日本人は言葉よりも行儀のよい人が評価されます。また、言葉については、自信に満ちた言葉よりも、謙遜に価値があるとされます。
文化の違いから観光事業を考える
観光事業を考える場合も、文化の違いに注意を払うべきでしょう。日本人は、自分の評価よりも名所であることを優先します。名所に行くこと自体に価値を見出すのです。その証拠を残す「スタンプラリー」は日本特有のものです。西欧人はそんなことはしたいとも思わないので、特に有名でなくても自分がよいと思った場所に行きます。
そんな西欧人には日本独自のものや考え方をもっと伝えることが大切です。逆に、西欧に日本人をもっと呼び込もうと思えば、スタンプラリーのしかけを名所に作るのも1つの方法でしょう。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 経済学部 観光政策学科 准教授 武本 Timothy 先生
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