つながりを育み、生きている実感をもたらす芸術文化の働き
病も吹き飛ぶ? ダンスの力
人の気持ちを晴れやかにするのは、芸術文化の大切な役割です。一例が、あるダンスアーティストが取り組む、PD(パーキンソン病)患者のための「PDダンス」です。PDは、脳内の神経伝達物質ドーパミンが減って運動障害などが起こる高齢者に多い病気です。ダンスで治るわけではないのですが、その楽しさから一時的にドーパミンが増えると考えられ、歩行が難しくつえに頼っていた人が、活動後にスタスタと歩いて帰ることも、一時的にせよしばしばあります。また、男性も女性もおしゃれ心がよみがえったり、連絡に必要だからとLINEを覚えたりと、こうした活動は患者が生きている実感を保ち続けること、さらに孤立せずに社会性を保つことにつながるのです。
舞台芸術で親子をサポート
PDダンスのような成果をめざした準備中の活動が、0~1歳児と両親を対象にした「ベイビー・ミーツ・シアター」です。参加者がダンスや演劇のプロと共に、パフォーマンスを交えた読み聞かせなどを楽しむ活動です。目的は二つあり、一つ目はタイトル通り「赤ちゃんが初めて舞台芸術に出会う」機会作りです。舞台芸術が乳幼児の発達を促すことは科学的な研究成果も示されており、乳児であってもパフォーマーの動作を覚えて、家でまねていた例もあります。二つ目は親同士の横のつながりを作り、子育てを支援することです。演劇やダンスを活用して、社会問題でもある育児中の親の孤立を防ぐことが目的ですが、こうした部分でも芸術文化は役立ちます。
必要性が高まる「つなぎ手」
デジタル技術の進展や気候変動など、社会が急速に変化して、ついていけずに疲れを感じる人は増えると考えられます。日ごろから生きづらさを感じている人もいます。こうした中で、芸術文化は人の心身を支えることができ、その働きが社会に求められつつあります。芸術文化と地域や社会がつながること、そしてつなぐ役割を担う「つなぎ手」のニーズは、今後いっそう高まるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
芸術文化観光専門職大学 芸術文化・観光学部 芸術文化・観光学科 教授 古賀 弥生 先生
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