なぜ「悪い円安」が起きた? 経済を加速度的に成長させるには
悪い円安が起きた理由を探る
日本では2022年、主要通貨に対して円の価値が下がり、円相場が変動するようになって以来一番の円安になっています。従来の円安は輸出が有利になるなどのメリットがありましたが、ここまで円が安くなると、世界の中での日本経済と人々の所得が小さくなるデメリットの方が大きい「悪い円安」だと言えます。
なぜこのような悪い円安が起きてしまったのでしょう。世界経済の歴史や社会的な背景を探ると、加速度的な経済成長に欠かせない要素が見えてきます。
世界の経済成長をひもとく
世界経済は、19世紀以降大きく成長してきました。きっかけはイギリスの産業革命で、蒸気機関などの新技術導入により、さまざまな産業が機械化されました。その結果1人当たりの生産性が何倍にも跳ね上がったのです。また、イギリスでは人材育成のために19世紀半ばに義務教育が導入されました。機械の扱い方を理解するためには読み書きや計算の知識が必要だったからで、教育が充実したことで生産性はさらに上がりました。その後も、技術革新や第二次大戦後の世界経済の成長を促進する通貨の仕組み創設や国際機関の設立などがあり、今日まで経済成長が続いています。経済学では、教育を受ける期間が長い国ほど基本的に1人当たりの平均所得が高いこともわかっています。
経済を成長させるには
過去の事例から、加速度的な経済成長にはいくつかの要素が重要なことがわかります。技術革新、仕組みの大胆な変更、そして労働を担う人々への教育といった事柄です。その視点から日本を見てみると、少子高齢化で労働力人口が減り、市場が縮小しています。生産性を上げるITなど新たな技術への積極的な投資や状況を抜本的に改善する大胆な改革もたいして行われていません。そのため、経済成長が低迷し、賃金が上がらず、日本経済の価値を下げる「悪い円安」に陥ってしまったと考えられるのです。
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先生情報 / 大学情報
新潟県立大学 国際経済学部 国際経済学科 教授 中島 厚志 先生
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