旅の途中で商売? デジタル技術が激変させたネパールの観光市場
ネパールの観光市場、タメル地区の商売
ネパールの首都カトマンズには、タメル地区という大きな観光市場があります。そこにはインドやチベット、中国といった周辺国など、さまざまな国・地域から人々が集まり、観光ビジネスを行っています。こうした経済活動の多くは、政府の定める法律や税制度にとらわれず、商人同士の個々の信頼関係から経済利益を得ようとするインフォーマルなものです。日本とは異なり、法規制や個人情報に関する制約が緩やかなため、バックパッカーや長期旅行者たちが現地の人とつながり、観光客向けの商売を展開するケースも多く見られます。
デジタル技術による激変
近年、タメル地区では、中国資本によるデジタル技術の導入により、観光客がタメル地区と自分の国を遠隔的につないで気軽にビジネスをするという特殊な状況がみられるようになりました。また、タメル地区で働く人々もSNSや電子決済、ライブ配信やネットショッピングを活用することで、観光客と継続的に取引ができるようになりました。このように、デジタル技術の導入は、旅と仕事の区別をなくしたり、観光のオン・オフシーズンをなくすこともあるのです。
その一方、ネパールでは、ここ10年で地価や物価が高騰し、家族の生活や子どもの教育費を稼ぐために海外に出稼ぎに出でるネパール人が急増しました。国内では十分な仕事が得られないためです。南アジアの最貧国であるネパールのような国ほど、デジタル革新の影響を強く受けてしまいます。
他者との違いから自分を知る
自国とは異なる国・地域に赴いてそこの文化や生活、習慣、考え方を調査する学問が文化人類学です。スマートフォンを駆使して旅とビジネスを両立しながら自由に生きる人々について考えることは、日本に生きる私たちの生活と彼らとの違いを明らかにすると同時に、日本の文化や生活について深く理解することにもつながります。そこから、他者のためにできることは何か、自分にとってより良い生き方は何なのかを考えることにもつながるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
帝京大学 外国語学部 国際日本学科 講師 渡部 瑞希 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
文化人類学、経済人類学、観光人類学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?