被災地で新たなビジネスを生みだす要因とは?

被災地で新たなビジネスを生みだす要因とは?

被災地の経済成長

大規模な自然災害が起こると、通信や交通といったインフラが破壊され、地域経済は大きなダメージを被ります。しかしある統計では、被災した地域の経済はその後成長の可能性があることが確認されています。特に、新しいサービスや製品が生まれ、起業が増えてイノベーションが起こりやすくなるのです。東日本大震災の後は宮城県の開業率が全国で1~2位の水準まで高まり、2005年に超大型ハリケーン「カトリーナ」の被害を受けたアメリカのニューオーリンズも、全米屈指の起業都市になりました。

人の心の変化と新たなネットワーク

その要因は、まず地域の課題が災害によって表面化することが考えられます。例えば宮城県は、もともと過疎化や水産業の衰退が著しく、震災によってさらに深刻化したことで、地域の人たちが「新しいことを頑張ろう」と思う状況が生まれました。また、震災後は多くの人が助けに入り、そこで人と人との新たなつながりが数多く生まれ、このネットワークもイノベーションを促進したとも考えられます。逆に、従来の地域ネットワークが災害によって失われたことで、かえって自由な発想と行動が可能になったというケースや、身近な人が亡くなる経験をしたことで「一度きりの人生を悔いなく生きたい」と起業に踏み切るケースもみられました。

当事者の声を聴く

このように、被災地の経済が成長しやすい要因には、地域経済の問題だけでなく、「誰かの役に立ちたい」「頑張ろう」「後悔したくない」といった心理学的な要素や、人と人とのネットワークという社会学的な要素も絡んでいます。したがって災害とイノベーションとの関係を学術的に明らかにするには、経済的な指標を統計データから得るだけでなく、実際に被災地でビジネスに取り組む人や、その支援者の声を聴くことが欠かせません。こうした研究を重ねることで、自然災害が多く起こる日本において、災害後や災害に備えたより適切なビジネス支援のあり方が見えてくるのです。

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東北福祉大学 共生まちづくり学部 共生まちづくり学科 准教授 品田 誠司 先生

東北福祉大学共生まちづくり学部 共生まちづくり学科 准教授品田 誠司 先生

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経済学、心理学、社会学

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高校までと違い、大学以降の学びや研究は、答えがはっきりと出ない、あるいは複数の答えがある問題を考えることがほとんどです。また、自ら問題を見つけていかなければなりません。その分、学問的にも、さまざまな領域の知識や理論が求められます。
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