キング牧師が公民権運動のなかで発見した非暴力の「力」とは?
米国社会を変革した公民権運動
公民権運動とは、1950年代から60年代にかけてアメリカ南部で起こった社会運動で、一般の黒人たちが主人公となり自由と平等の実現をめざしました。この運動は米国社会に大きな影響を与え、1964年には公民権法、その翌年には投票権法を成立させました。この公民権運動のなかで重要な役割を担ったのが、黒人のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師でした。
バス・ボイコット運動と非暴力直接行動の「力」
アメリカ南部では、19世紀に奴隷制が廃止された後も、黒人に対する制度的差別が人種隔離政策という形で続いていました。しかし、1955年、アラバマ州モントゴメリーでローザ・パークスという黒人女性が人種隔離されたバスで白人に席を譲らず逮捕されたのをきっかけに、黒人たちによるバスのボイコットが始まります。この抗議行動のまとめ役を担うことになったのが若き日のキング牧師でした。
キング牧師は、この運動のなかで非暴力直接行動の「力」を具体的に発見していきます。この運動は、白人の差別主義者たちによる妨害や暴力を受けながらも粘り強く続けられ、1年後には連邦最高裁がバス車内での人種隔離は違法であるとの裁定を下すに至るのです。後にキング牧師は、非暴力直接行動を「治癒の剣」と呼びました。それは、武器を使うことなく社会の「病」を癒す力をもっており、さらに根本的には、恐怖や劣等感、無力感という「病」から黒人たちを解放する力を宿していたからです。
日本でも見られる制度的差別と非暴力直接行動
現代の日本にも、非暴力直接行動を粘り強く続けている人々がいます。例えば、沖縄県の辺野古では、政府が推し進める米軍基地の建設に反対して「座り込み」が続けられています。マジョリティ(多数派)の都合によってマイノリティ(少数派)が理不尽な境遇に置かれる構造は、公民権運動当時のアメリカと本質的に変わりません。制度的差別が見えづらくなっている今の時代にこそ、非暴力直接行動の意味と価値を、私たちは再認識すべきなのです。
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