社会の仕組みを解き明かす「経済学」
幅広い経済学の対象と手法
経済学の研究範囲は、恐らくあなたが予想しているよりも幅広いものです。労働や金融といった狭義の経済活動のみならず、政治、法律、組織、歴史、地理、文化、人間の心理など、人間や社会に関する多くのことが分析の対象になります。経済学は、一言で言えば、社会における因果関係について、分析的かつ総合的に考えていこうとする学問分野だと言えるでしょう。それにともない、分析手法は、紙と鉛筆を使う「理論分析」や、コンピュータを使った「シミュレーション分析」、データを用いた「実証分析」など、多種多様です。
社会問題を経済学で考える
経済学の分析対象を拡大することに貢献してきた研究者の一人に、ゲイリー・ベッカーという人がいます。ベッカーは、1960年代から家族や教育環境、差別などの分析に、経済学の手法を応用しました。なぜ差別が生まれるかなどという社会問題を、経済学の需要・供給・価格のバランスの考え方をあてはめて分析したのです。それまで金融や貿易、財政などを分析してきた経済学の対象を、社会や人間の行動などにまで押し広げ、以降の経済学の研究に大きな影響を与えました。同様に、セオドア・シュルツという経済学者は、農業問題に経済学の分析手法を用い、生産性の向上を始めとする農業近代化政策に大きく貢献しました。
社会の仕組みはどこまで科学的に明かされるのか
また、数学者ジョン・ナッシュらのアイディアを中心とする「ゲーム理論」では、人や家族、組織、政府といったさまざまな主体による意思決定が、互いにどのような影響を与えるのかを追究します。その手法は経済学にも根付き、あるモノの価値を巡る人間関係や心理に至るまで、経済学で研究されるようになりました。
以上まとめると、経済学とは、人々が制約の中でどのような選択をし、その結果どんな状況が起きるのか、社会の仕組みはどのようにバランスを保とうとしているのかを分析する学問だと言えるでしょう。
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