環境に優しい未来の航空機を支える「パワーエレクトロニクス」

環境に優しい未来の航空機を支える「パワーエレクトロニクス」

環境に優しい未来の航空機

多くの航空機はジェットエンジンによって推進力を得ていますが、自動車と同様に、電気で動く「電動航空機」が注目されています。電動航空機が実現すれば地球温暖化ガスの排出量を低減することが可能です。その開発に向けて、さまざまな角度から電動航空機の研究が行われています。特に重要なのが、動力となるモータが安全に効率よく動くように電力を変換する技術、「パワーエレクトロニクス」です。電気でモータを回すときに、直流と交流とを変換したり、電圧の数値や電流の波形を変えたりする「コンバータ」や「インバータ」という装置や、配電システム全体に関わる技術です。

軽量かつ信頼性の高い電気回路

航空機では使う部品をできるだけ軽くしなければなりません。電動航空機のパワーエレクトロニクス機器の中で大きな重量を占めるものは平滑回路です。平滑回路は、DCをACに変換するインバータ装置の出力側に設けられます。インバータが出す長方形が並んだような「矩形(くけい)波」を、滑らかな山・谷の形を描く「正弦波」に変換します。この平滑回路を低減するための回路「マルチレベルインバータ」が開発されています。マルチレベルインバータを使うと、平滑回路の重量を低減するだけでなくモータ内部の放電を抑えるなど信頼性が大幅に高まります。

日本発の電動航空機をめざして

電動航空機の安全性には、遮断器も大きな役割を果たします。家庭用電気のブレーカーは、機械的なスイッチが切り替わって電気を遮断します。しかしそれだと時間がかかりすぎ、また重量も大きくなります。そこで半導体を用いて素早く電気を遮断する仕組みを作ります。この回路が完成すれば現状の30%の軽量化が見込まれます。
パワーエレクトロニクス技術で世界をリードすることができれば、電動航空機が日本の新たな産業の柱になる可能性もあると期待されています。

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先生情報 / 大学情報

大阪産業大学 システム工学部 システム工学科 教授 岩田 明彦 先生

大阪産業大学システム工学部 システム工学科 教授岩田 明彦 先生

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電力工学

メッセージ

航空機産業自体は海外の2つの企業が独占している状態で、日本の存在感は世界では小さいと言えます。「電動航空機」は、世界でも未開拓の領域です。世界に先駆けて日本が研究開発を進め、リーダーシップを取れれば、自動車産業に次ぐ新たな経済の柱をつくることができます。電動航空機が実用化されるのは20年後くらいで、あなたが働き盛りの年齢になっている頃でしょう。そのときに日本に貢献できるよう、若い人たちに今からこの分野に飛び込んでほしいです。

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