講義No.12109 法学

プロスポーツ選手の現役引退後について考えてみよう

プロスポーツ選手の現役引退後について考えてみよう

人気の職業に冷たい? 社会保障

ユーチューバーとプロ野球選手と将棋の棋士、この三者に共通するのは何でしょうか。どれも人気の職業ですが、自分で確定申告をして所得税を払う「個人事業主」です。会社に雇われて働く「会社員=労働者」と違う点は、社会保障があまり整っていないことです。会社員なら、会社を辞めて次の仕事が決まるまで「雇用保険」制度でお金がもらえますが、個人事業者にはその制度がありません。高齢になるともらえる年金の額も、会社員が月平均約15万円なのに、個人事業者は月平均約5万円です。日本では会社員を中心に社会保障が発展してきたからです。

現役引退選手をどう救う?

個人事業主のプロスポーツ選手は、現役を引退した後、雇用保険が出ない中で、どのようにして生活しながら次の職を探していくか、という問題に直面します。もちろん、現役引退後、監督やコーチ、経営部門などに残ることもありますが、採用枠はわずかです。スポーツ関係ではない仕事を探す場合には、スポーツ以外の能力が重要になるため、職探しに苦労をします。そこで、選手たちがお互いに助け合う組織(選手会)の一部では、引退する選手にまとまったお金を渡すしくみをつくっています。また、引退試合を行い、入場料などの収入を引退する選手に渡すしくみのあるスポーツもあります。華やかに見えるプロスポーツ選手は、社会保障のすき間で苦労し、何とか工夫をしているのです。

働き方に合わせた社会保障へ

オーストラリアやニュージーランドでは、現役のスポーツ選手に、引退後も含めた自分の人生をどう生きるかを意識してもらうプログラムを実施しています。面談をして、将来何をしたいかを聞き、時には体験してもらいます。プログラムでは、選手は仲間や家族にも言えない悩みも話せるので、メンタル面の助けになり、パフォーマンスが向上する効果があると言います。正社員ではない非正規雇用や個人事業者など、働き方が多様化する現代では、スポーツ選手に限らず、国民全体の社会保障の法制度を見直す必要があるのです。

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先生情報 / 大学情報

福岡大学 法学部  教授 山下 慎一 先生

福岡大学 法学部 教授 山下 慎一 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

私は、子どもの頃からサッカーが大好きでした。サッカー関係の仕事に就きたいと思ったこともありましたが、法学の研究者を選んだ現在も、選手に会うなど、スポーツと法学が交わるスリリングな研究ができています。直接関係のない趣味が仕事に生きることは絶対にあります。
また将来、仕事をする上で、高校の勉強は役に立ちます。国語や英語は、話の筋をつかむ能力を育てますし、数学は論理的な展開や考え方を身につけることができます。高校時代は趣味も勉強も全力で取り組むと、いつかきっと実を結ぶと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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福岡大学は、9学部31学科、在学生2万人を有する総合大学です。多くの学生や教職員が行き交う広大なキャンパスは福岡市の南西部に位置し、都心部との交通の便もよく、活気に満ちあふれています。「ワンキャンパス」に全学部が集結しており、総合大学の魅力を生かし、学問・研究および課外活動などにおいて学部間の交流が盛んに行われ、文系・理系だけにとどまらない幅広く多様な視野と知識を得ることが可能な大学です。また、創立から90周年で輩出した卒業生総数は28万人を超え、あらゆる分野で力を発揮しています。