カルノシン、アンセリンの増加で鶏むね肉がスーパーフードに!?

カルノシン、アンセリンの増加で鶏むね肉がスーパーフードに!?

カルノシン、アンセリンとは?

近年、高タンパク低カロリー食品として注目を集める鶏むね肉には、カルノシン、アンセリンという機能性成分が他の肉より多く含まれています。カルノシンには抗酸化作用、緩衝作用および血圧・血糖値を下げる作用があります。アンセリンにも同様の作用があり、鶏むね肉中のカルノシンやアンセリンをさらに効率的に増やすための研究が行われています。

ニワトリの体内で起こる劇的な代謝の変化

実験では、ニワトリにえさを一定期間与え、その後、肉の成分を調べます。えさに混ぜるのは、カルノシンとアンセリンを構成する2つのアミノ酸の1つ、ヒスチジンです。このヒスチジンの含有量が少ないえさ、普通のえさ、多いえさの3種類を与えたところ、ヒスチジンが少ないえさを食べた場合はカルノシンやアンセリンが驚くほど減り、対照的に多いえさではカルノシンもアンセリンも増えました。えさに含まれるヒスチジンの量の増減はわずかであっても、ニワトリの体内では劇的な代謝の変化が起こっていると考えられます。この実験から、カルノシン、アンセリンによる良質な食肉生産に寄与する可能性が示唆されました。将来的には、こうした機能性成分を多く含む鶏むね肉の開発が期待されています。

将来はアンセリンを増やす実験も……

研究では、単純にカルノシンとアンセリンの量の増減を見るだけではなく、なぜその量が変わったのかを生物学的なメカニズムから検証しています。例えば、カルノシンからアンセリンは生成されますが、その反応は、カルノシン N-メチルトランスフェラーゼという酵素が触媒し、カルノシンのメチル化が起こります。そこに関与するのが、メチオニンというアミノ酸です。これを、アンセリンを作る「材料」の1つとして考え、メチオニンが多いえさを与えてアンセリンの増加を測る実験も本格化しています。アンセリンは人の体内にはほぼ見られない成分ですが、摂取することで我々の健康維持によい影響を与えることが分かってきており、研究に期待がかかります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 助教 甲斐 慎一 先生

新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 助教 甲斐 慎一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

飼養栄養学

メッセージ

高校や大学2年ぐらいまでは教科書から学ぶことが中心ですが、大学3~4年の研究では自ら新しいものを生み出していく学びとなります。それが研究の醍醐味(だいごみ)です。自分が今、研究していることが世界で初めてになるかもしれないという喜びや、新たな驚きに出会えるかもしれません。将来、自分は何を学びたいのか、何になりたいのかを見つけるには、自分からアンテナを立ててアクションを起こすことが大切です。何もしなければ何も始まりません。理屈は「後から」ついてくるもの、とにかく「先に」行動なんです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

新潟食料農業大学に関心を持ったあなたは

“Farm to Table to Farm”は「農場から食卓へ、そして農場へ」という意味です。食物は、農場で生産されてから多くの人の手を経て食卓に届けられ、この流れを「フードチェーン」とよび、農場から人々の食卓まで、フードチェーン全体をつかさどる産業を食料産業とよんでいます。本学では、新しい食料産業を作り出すために不可欠な科学(サイエンス)、技術(テクノロジー)、経済活動(ビジネス)を一体的に身につけます。日本の農業を変え、さらに世界をリードする新しい食料産業をともに生み出していきましょう。