地球を救う燃料電池の普及を目指して

水の電気分解と逆の反応
中学校の理科で、「水の電気分解」について勉強したことでしょう。水(H₂O)に電気エネルギーを与えることで、水が水素(H₂)と酸素(O₂)に分解する反応です。逆に、水素と酸素を反応させて水になるときは、電気エネルギーが生まれます。この原理を応用した発電装置が「燃料電池」です。
これを使う「燃料電池自動車(FCV)」は、排出するのが水だけで排ガスを出さない、地球にやさしい乗り物です。今では一般の人が購入できる市販車もありますが、売れたのは1万台以下と普及が進んでいない現状もあります。
燃料電池自動車の普及を進めるために
現段階での燃料電池自動車は高級車並みの価格なので、庶民が気軽に購入できる価格になれば普及が進むと考えられています。普及が進めば燃料となる水素を供給する水素ステーションも増やすことができて、燃料電池自動車の使用がより便利になり、ますます普及が進むという相乗効果が期待されます。
燃料電池自動車の価格が上がってしまう理由の一つに、水素と酸素の反応を促す触媒として使われる白金(プラチナ)が非常に高価なことが挙げられます。
触媒を無駄なく使うための研究
現在市販されている燃料電池自動車の一部には、白金をできるだけ使わず、かつ、反応が起こる表面積を増やすための工夫が施されています。それは、白金を小さい粒にして、スポンジのようにたくさんの穴が開いた炭素の塊に、白金の粒を分散させつつ閉じ込めるというものです。その穴に水素や酸素を送り込み、白金と触れさせて反応を起こすのです。そして、そこで生まれた電気を、導電体である炭素を通して集めます。
この技術の難点が、触媒となる白金の粒に効率よく届くように、気体を送り込む方法です。穴を大きくすれば気体は通りやすくなりますが、穴を大きくして炭素の間の空間が広がると、電気を集める効率が悪くなるのです。この矛盾が解消できれば、価格を抑えた燃料電池自動車の開発につながると期待されています。
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北見工業大学工学部 地球環境工学科 エネルギー総合工学コース 准教授植西 徹 先生
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