食品は私たちの身体に積極的に働きかけています!
肥満は生活習慣病のもと
人間は食べ過ぎや運動不足になると、お腹の周りに皮下脂肪や内臓脂肪が増えます。白色脂肪細胞と呼ばれ、エネルギーを蓄える働きとともに、大きくなった内臓脂肪は高血圧や糖尿病などのさまざまな生活習慣病の発病につながります。この肥満は食生活のような生活習慣に関係しますが、体質として親から子へと遺伝します。現在では、さまざまな病気になるリスクを遺伝子の検査により診断が可能となっています。将来、肥満になる可能性も遺伝子の検査で予測できる時代がきています。
褐色脂肪細胞と体温の話
人間の身体には褐色脂肪細胞という組織があります。病気のもととなる白色脂肪細胞に対し、褐色脂肪細胞は脂肪を分解してエネルギーを出し、体温を上げる働きがあります。特に寒い季節では、体温を維持するために褐色脂肪細胞が活躍しています。褐色脂肪細胞は赤ちゃんのときに最も多く、年齢を重ねるごとに減っていきます。大人になると肥満になりやすく、それが引き金になって生活習慣病を起こすようになるのは、褐色脂肪細胞が減っていくのが一因です。この褐色脂肪細胞を刺激して熱を生み出し、また褐色脂肪細胞自体を増やす働きをする物質として唐辛子に含まれているカプサイシンという成分が注目されています。
食品は単に身体の材料ではない
食品は単に身体をつくる材料であったり、エネルギーの原料としてだけではなく、身体の組織を刺激することで働きを促したり、健康維持に必要な体内の環境を整える成分が含まれています。例えば、うま味や辛味も身体に積極的に働きかけている一例と言えます。一方、ビタミンが不足すると病気になりやすいのは、食品成分の大切な機能の一例と言えます。食事をするときには、カロリーだけを気にしがちですが、食品成分の身体に働きかける機能も考える必要があるのです。現在も、病気と食品成分の関係や作用するメカニズムを分子レベルで解明することや、健康増進に役立つ新しい食品成分の機能の発見に向けて、研究が行われています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 矢中 規之 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
農学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?