講義No.12167 食物・栄養学

食品は私たちの身体に積極的に働きかけています!

食品は私たちの身体に積極的に働きかけています!

肥満は生活習慣病のもと

人間は食べ過ぎや運動不足になると、お腹の周りに皮下脂肪や内臓脂肪が増えます。白色脂肪細胞と呼ばれ、エネルギーを蓄える働きとともに、大きくなった内臓脂肪は高血圧や糖尿病などのさまざまな生活習慣病の発病につながります。この肥満は食生活のような生活習慣に関係しますが、体質として親から子へと遺伝します。現在では、さまざまな病気になるリスクを遺伝子の検査により診断が可能となっています。将来、肥満になる可能性も遺伝子の検査で予測できる時代がきています。

褐色脂肪細胞と体温の話

人間の身体には褐色脂肪細胞という組織があります。病気のもととなる白色脂肪細胞に対し、褐色脂肪細胞は脂肪を分解してエネルギーを出し、体温を上げる働きがあります。特に寒い季節では、体温を維持するために褐色脂肪細胞が活躍しています。褐色脂肪細胞は赤ちゃんのときに最も多く、年齢を重ねるごとに減っていきます。大人になると肥満になりやすく、それが引き金になって生活習慣病を起こすようになるのは、褐色脂肪細胞が減っていくのが一因です。この褐色脂肪細胞を刺激して熱を生み出し、また褐色脂肪細胞自体を増やす働きをする物質として唐辛子に含まれているカプサイシンという成分が注目されています。

食品は単に身体の材料ではない

食品は単に身体をつくる材料であったり、エネルギーの原料としてだけではなく、身体の組織を刺激することで働きを促したり、健康維持に必要な体内の環境を整える成分が含まれています。例えば、うま味や辛味も身体に積極的に働きかけている一例と言えます。一方、ビタミンが不足すると病気になりやすいのは、食品成分の大切な機能の一例と言えます。食事をするときには、カロリーだけを気にしがちですが、食品成分の身体に働きかける機能も考える必要があるのです。現在も、病気と食品成分の関係や作用するメカニズムを分子レベルで解明することや、健康増進に役立つ新しい食品成分の機能の発見に向けて、研究が行われています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 矢中 規之 先生

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 矢中 規之 先生

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農学

先生が目指すSDGs

メッセージ

研究の喜びは健康に関わる、想像もしなかったような新しい食品成分の機能を発見することです。人の健康に役立てる発見があったときには大きなやりがいを感じます。それに加えて、そうした研究結果をもとに社会に貢献できることも、研究の魅力です。さらに、遺伝子組換え技術で解剖しなくても体外から病気の発症がわかるマウスを開発し、実験動物を大切にすることにも力を入れています。これからの時代に欠かせない観点だと思っています。

先生への質問

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広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。