「食品マーケティング」から考える子どもの健康

食物選択への広告の影響
テレビやスマートフォンを見ていると、たくさんの広告が流れてきます。今、栄養価の低い加工食品の宣伝が子ども達に与える影響が懸念されています。子どもは「情報を批判的に評価する力」が育っている途中なので、広告で見聞きしたものを無意識に「良いもの」としてとらえやすく、この特性が不健康な食生活につながる恐れがあるからです。この問題に対して、2010年にWHO(世界保健機関)は食品の宣伝から子ども達を守るための提案をしました。これを機に、海外では法律による規制や企業自身による取り組みなど、子どもへの食品広告を減らす動きが広まっています。
環境が人々の健康を左右する
栄養価が低くエネルギーだけが高い加工食品を手にしやすい環境にあるのは先進国だけではありません。近年では途上国にも広がっているため、肥満が世界的な健康課題となっています。この解決には、食品マーケティングが重要です。
食物選択は、個人の好き嫌いや知識だけで決まるものではありません。例えば、お祝いにケーキが付き物なのはなぜでしょうか。突き詰めて考えてみると、企業の宣伝や文化などの環境が大きく影響していることがわかります。だからこそ広い視野で問題をとらえて、対策をしていく必要があるのです。
教育的アプローチで子どもたちを強く
インターネット上の広告は国境を越えて届くため規制が難しく、広告と気づきにくいという問題があります。そのため、子ども達に広告の手法を教え、メディアリテラシー(情報を正しく読み解き活用する力)を育てる教育も大切です。こうした能力を行動につなげるには動機が必要です。海外では自立心が芽生える思春期の子どもに「大人が仕掛けるマーケティングに操られていいの?」と問いかけ、「広告に流されずに判断しよう」という動機を引き出す取り組みが成功しています。日本では食育で健康的な食生活の知識は身についていても、宣伝等に抵抗する力は弱いのが現状です。この「宣伝に惑わされない力」を育てる教育方法の研究が始まっています。
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