魚の心理と脳のニューロンの関係を突き止める
魚は恐怖を感じると心臓の鼓動が遅くなる
魚には心があります。例えば、水鳥から襲われそうになると魚は逃げようとします。その時、水面に影が見えたとすれば、次は影を見ただけで逃げるようになります。これは、魚が恐怖を学習しているからで、自分の生命を守るための行動と理解できます。これを実験室でやってみましょう。魚に電極を当て心電図が測れるようにします。恐怖を学習させるために、光を当てると同時に体に刺激を与えます。心電図を観察すると、刺激に反応してパルスが遅くなります。次からは、光を当てただけでパルスが遅くなります。魚は、逃げられない環境では身を潜めて体の機能を抑えようとします。人間は鼓動が速くなりますが、魚の場合は遅くなるのはそのためです。
どのニューロンが恐怖に関与しているか
心理と脳の関係を知るためには、脳にあるニューロン(神経細胞)を1つずつ調べます。例えばキンギョのニューロンは約1億個ありますが、これらは互いにつながっていて、電気的な通信ネットワークを形成しています。恐怖には、その中のあるエリアが関与していることがわかっています。恐怖学習前の電気的な信号と学習後の信号の変化を、1つのニューロンに注目して観察するわけです。しかも、関係しているのは1つだけではないので、互いにつながっている2つのニューロンの変化も見ながら、関係しているニューロンの場を突き止めます。例えば、Aのニューロンの機能を止めた時のBのニューロンの信号を計測すれば、新たなCのニューロンが関係しているかどうかがわかります。
分子や遺伝子と行動との間を埋める
分子や遺伝子の研究によって、生物の微細な構造やDNA(設計図)もわかってきました。ただ、心理や行動といった具体的な活動とそれらの関係はまだまだ謎が多いのです。そこまでわからないと、生物を理解したことにはならないでしょう。このニューロンの研究などは、そこを埋めるためにあるのです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 准教授 吉田 将之 先生
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