酵母でジェット機が飛ぶ? 期待される新たなバイオ燃料

酵母でジェット機が飛ぶ? 期待される新たなバイオ燃料

細胞いっぱいに油を貯める酵母

酵母はパンやみそ、ワインなど多くの食品の発酵・醸造に使われています。その酵母をバイオ燃料の生成に利用する研究が進められています。現在、バイオ燃料のひとつであるユーグレナがジェット燃料などに使用されていますが、藻類であるユーグレナは光合成で成長するため、培養には広大な土地と太陽の光が必要です。一方、酵母はタンクで効率よく培養ができます。バイオ燃料として注目されているのは「油脂生産酵母」と呼ばれる酵母で、細胞小器官(オルガネラ)の「油滴」に細胞がはちきれそうなほど油を貯めるというユニークな性質を持っています。

実験系を一から確立

油脂生産酵母が油を貯めるメカニズムは細胞周期と連動していると考えられます。細胞周期を自在に操ることができれば、効率よく油を生産できるため、細胞周期や油を貯めるスイッチとなる遺伝子が調べられています。しかし、油脂生産酵母は実験体系が確立されていません。そこで、一般的な出芽酵母や分裂酵母のノウハウを導入し、油脂生産酵母の遺伝子解析をするところから研究が進められています。

油脂生産酵母のもう一つの可能性

バイオ燃料として期待される油脂生産酵母ですが、実はまったく別の分野でも役に立つ可能性が示唆されています。それは肥満を研究するモデルです。油滴に油をいっぱいため込む油脂生産酵母は、私たちの体内にある脂肪細胞に酷似していることがわかってきました。脂肪細胞には、脂肪をため込む白色脂肪細胞と脂肪を燃焼する褐色脂肪細胞があり、白色細胞には脂肪を貯める油滴が1つ、褐色細胞には油滴が複数含まれています。そして油脂生産酵母にも油滴が1つのものと複数のものが確認されているのです。それらがどのような関係にあるのかまだわかっていませんが、油滴が1つのものから複数のものへと移行するメカニズムが解明されれば、肥満をコントロールするヒントが得られるかもしれないのです。

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帝京大学 理工学部 バイオサイエンス学科 准教授 高山 優子 先生

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分子細胞生物学

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メッセージ

私は大学の学部で魚類、修士でがん細胞、博士で酵母と、酵母の研究者の中では異色の経歴の持ち主です。その経験から、将来こうしたいと決めてしまうよりも、その時々で興味があることに専念することが大切だと思っています。やり込んだからこそ見えてくることが必ずあります。必要なのは、躊躇せず進む方向を自分で決めて一歩を踏み出すメンタリティの強さです。これからは受験勉強だけ頑張ればいいという時代ではなくなっていきます。自分は何をしたいのか、どう生きたいのかをしっかり考えてほしいです。

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帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。