「世界を見よ、危険に立ち向かえ、そして森を守ろう!」

「世界を見よ、危険に立ち向かえ、そして森を守ろう!」

森林は人間にも、ほかの生物にも有用な存在

地球観測衛星のデータによると地球上では、毎年九州2つ分にあたる森林が失われています。特に森林喪失が顕著なのは熱帯林です。熱帯林がある地域では経済発展のため、商業目的で森林を伐採したり、森林の下にある鉱山を開発したり、農地に転用したりしているからです。森林減少は、人間の生活にも影響を及ぼします。森林には自然のダムの役割があり、水を浄化する作用もあります。さらに森林は二酸化炭素を吸収するので、温暖化を緩和します。人間にとって、森林はなくてはならない存在なのです。
一方で、森林減少は別の問題を引き起こしています。「生物多様性の損失」です。熱帯林には多様な生物が生息しているので、熱帯林の消失は、そうした生物の絶滅を引き起こし、生物多様性を減少させてしまっているのです。

案外難しい森林保護

世界的にみると、森林減少や温暖化といった環境問題を解決することが大きな流れとなっています。とはいえ、「森林を守ろう!」とスローガンを掲げるだけでは森林保護は達成できません。
そこで、生物多様性を守るために「生物多様性条約」を締結したり、気候変動を抑制するために「気候変動枠組条約」を締結し、「パリ協定」を採択したりしています。私たちの身近なところでは、エコラベルの表示などで環境に配慮した商品を普及させるなど、さまざまな取り組みが行われています。

生活レベルを維持しながら、自然を守る知恵を

森林保護で私たちがめざさなければならないのは、本来あるべき生態系や種を守り、将来の進化の可能性を残すことです。もちろん人間も自然の一部なのですが、影響力が大きすぎるので、できるかぎり自然に関与しないことが求められます。
しかし、「森林を守るために今の生活は改めましょう。大学進学も無理です」と言われても、受け入れ難いでしょう。「生活レベルを維持しながら、自然を守る」という、夢のようなことをめざさなければならないのです。そして今、そのための知恵が必要になっているのです。

参考資料

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先生情報 / 大学情報

広島大学 総合科学部 国際共創学科 教授 山田 俊弘 先生

広島大学総合科学部 国際共創学科 教授山田 俊弘 先生

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生態学、環境自然科学、総合科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

森林減少は、世界の主要な環境問題として扱われています。森は、私たちに「水をきれいにする」「水を貯える」「気候変動を緩和する」といった恵みを与えてくれています。それゆえに、私たちは森を守らなければならないのでしょうか? 実は私はこの考えに違和感を持っています。「私たちにとって便利だから、役に立つから」という理由では、あまりにもさびしすぎるからです。
「森を守る、人として当然だろう」と、当たり前に言える世界を、そして普通に生活をすれば森を守れるような仕組みを作っていきましょう。

先生への質問

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