講義No.12172 保健・福祉学

ヒトは常に楽をして生きている?運動をカガクする動作分析の世界

ヒトは常に楽をして生きている?運動をカガクする動作分析の世界

未解明の運動メカニズム

人間が動作をするとき、体の中ではさまざまな関節、筋肉、神経が連動し合うことでその動作を成立させています。起き上がる、歩くなどの比較的シンプルな動作についてはどのような連動が起こっているのかがわかってきています。しかし、意外にもそれ以上の複雑な動きに関してはメカニズムが解明されていません。これを明らかにするのが動作分析という学問です。

人間は常に楽をしている

この研究では人間の体に反射マーカーを取り付け、動作をキャプチャーします。スポーツゲームの製作などで選手の動きをトレースするときに用いるものと同じと考えるとイメージしやすいでしょう。三次元動作解析装置を用い、動作時の角度や関節の回転力などを算出し、メカニズムを解き明かしていきます。
これまでの研究の結果、興味深いことがわかってきました。それが「人間は絶対的に楽をしている」ということです。どんな場面であれ、人間は動作を行うとき、エネルギーコスト最小で動きます。エネルギーのロスを防ぐということは生き抜くための本能ともいえますが、危険度や障害の有無などを瞬時に処理し、最もエネルギーがかからない動作を導き出しながら実行することはとても難しいことです。これを一瞬のうちに完結させてしまう驚くべき能力を、子どもから大人まで誰しもが持っています。

機能回復の糸口になる研究

こういったメカニズムを解明するのは、この分野の中でも基礎研究です。このベースを知ることは将来的な研究を発展させる礎にもなります。健康な人の体でどんな現象が起こっているかを詳細に紐解くことは、脳に原因を持つ病気の患者、あるいは障害によって麻痺などを抱え、動作に制限が出てしまっている人が機能を回復させるためにはどのようなリハビリテーションが必要かなど、回復の糸口にもつながります。人の運動をカガクする、運動の妙を理解する上でとても重要なのがこの動作分析という分野なのです。

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先生情報 / 大学情報

東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 准教授 村上 賢一 先生

東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 准教授 村上 賢一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

身体運動学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人と関わることが多い社会、人を知るということはとても大事なことです。そこを紐解いていくと、人の運動に関心を持つということは人に興味を向けることにもつながってきますし、社会性にもつながることだと思っています。医療関係の仕事に就きたいと考えている人も多いかもしれませんが、いろいろなことに目を向けて分析をしていくということはとても重要です。漠然とした捉え方よりも細かく見ていきながら分析能を高めていき、いろいろなことを考えて自分の中で解決していく能力を養ってほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東北文化学園大学に関心を持ったあなたは

東北文化学園大学は、仙台・国見の丘にキャンパスを持ち、医療・福祉・社会・経済・工学・情報の幅広い学びができる総合大学です。「実学教育」を教育理念に掲げ、専門職業人を育成する大学です。2021年4月から新しい学部を設置し、学際的な教育環境がさらに充実しました。また、「キャリアサポートセンター」の就職支援と相成って、例年高い就職率を誇り、卒業生は各業界で高い評価をいただいています。