ヒトは常に楽をして生きている?運動をカガクする動作分析の世界
未解明の運動メカニズム
人間が動作をするとき、体の中ではさまざまな関節、筋肉、神経が連動し合うことでその動作を成立させています。起き上がる、歩くなどの比較的シンプルな動作についてはどのような連動が起こっているのかがわかってきています。しかし、意外にもそれ以上の複雑な動きに関してはメカニズムが解明されていません。これを明らかにするのが動作分析という学問です。
人間は常に楽をしている
この研究では人間の体に反射マーカーを取り付け、動作をキャプチャーします。スポーツゲームの製作などで選手の動きをトレースするときに用いるものと同じと考えるとイメージしやすいでしょう。三次元動作解析装置を用い、動作時の角度や関節の回転力などを算出し、メカニズムを解き明かしていきます。
これまでの研究の結果、興味深いことがわかってきました。それが「人間は絶対的に楽をしている」ということです。どんな場面であれ、人間は動作を行うとき、エネルギーコスト最小で動きます。エネルギーのロスを防ぐということは生き抜くための本能ともいえますが、危険度や障害の有無などを瞬時に処理し、最もエネルギーがかからない動作を導き出しながら実行することはとても難しいことです。これを一瞬のうちに完結させてしまう驚くべき能力を、子どもから大人まで誰しもが持っています。
機能回復の糸口になる研究
こういったメカニズムを解明するのは、この分野の中でも基礎研究です。このベースを知ることは将来的な研究を発展させる礎にもなります。健康な人の体でどんな現象が起こっているかを詳細に紐解くことは、脳に原因を持つ病気の患者、あるいは障害によって麻痺などを抱え、動作に制限が出てしまっている人が機能を回復させるためにはどのようなリハビリテーションが必要かなど、回復の糸口にもつながります。人の運動をカガクする、運動の妙を理解する上でとても重要なのがこの動作分析という分野なのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 准教授 村上 賢一 先生
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