住み続けられるまちづくりのために建築計画ができること
「続き間」が今になって注目されているわけ
老いや病気などで療養している人のための環境は、より配慮されなければなりません。空間の使い方を詳細に観察・調査し、設計する際に配慮すべき点を提示していく研究分野が建築計画学です。例えば高齢者の介護を観察と聞き取りから使い方を考察した結果、現代人には敬遠されがちな「続き間」が上手に使われていることがわかりました。見守りやすいようにふすまを開けて利用したり、添い寝をする際に半分だけ閉めたり、気軽に空間の大きさや視線を調整できる融通性によって、簡単に療養環境に使い方を転換できることがわかりました。
病院や福祉施設といった専門施設が引き受けていた時代が変わり、療養の場は再びまちに帰ってきています。住宅の改善のみならず、福祉施設と住宅の中間にあたるような「新しい建築のカタチ」が必要とされています。
地域の文化拠点としてのホスピス:イギリスの場合
近代ホスピス発祥の地イギリスでは、市民からの寄付で運営されるグループホームのような小さなホスピスが各地域にあります。建物は使われなくなった大きな屋敷を改装して再利用しているケースも多く見受けられます。日本でも大きな家を持て余す高齢者が増える一方で、郊外では点々と離れた場所で暮らす高齢者を訪問する医師や看護師、介護士の不足が問題となっています。住み続けられるまちづくりや持続可能な介護を考えると、イギリスのホスピスのような小規模な集住形態が参考になります。地域の拠点として周辺の住民に支えられている点も注目です。
宮城県東松島市でのまちづくり事例
宮城県東松島市で、大学と市が連携したまちづくりが進められています。民間と行政、大学が協力体制をつくり、住民との対話を重ねていくことで、そのまち独自の集まって住む新しいカタチなどを模索していくことになるでしょう。建築学は建築の提案はもちろん、制度の変更も含めたデザイン全体を主導する機動的な学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 工学部 建築環境学科 教授 山本 和恵 先生
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