住民主体の「見守り」が、高齢者や被災者の生活課題を解決する
地域で高齢者を見守る
高齢化と人口減少が進み、高齢者だけで暮らす世帯や、一人暮らしの高齢者が増えています。地域のつながりが希薄になる中で、誰にも相談できずに孤立し、自宅で亡くなってもしばらく発見されなかった、という孤独死も少なくありません。そうした事態を防ぐために、地域住民、行政、専門の知識のある事業所などが協力しながら、地域で高齢者を見守るネットワークづくりが行われています。見守りとは「お互いを気にかけること」ですから、地域住民が主体となって行動できるようになることが理想です。
被災地でも見守りは重要
東日本大震災の津波被害で住まいを失った人たちの中には、再びもとの場所に住むことがかなわず、高台など新たに造成された集団移転地に入居した人がたくさんいます。そこには昔から付き合いのある人もいれば、別の地域から来た人もいて、家族構成や状況もそれぞれ異なります。そうした中で新しいまちづくりを行う場合、住民同士で支え合う仕組みづくりがとても重要です。
まずは地域のネットワークをつくることが必要です。お茶会などのイベントをきっかけにコミュニティができていくこともあります。みんなが集まる場所に出てこない人のところには、地域の住民の方から訪問します。そのいちばんの目的は、安否確認ではなく顔を知ることです。知らない人のことは無関心でいられても、知っている人のことは心配になるものです。知っていることで、犯罪防止につながる可能性もあるのです。
見守りは心理と福祉の両輪で
地域包括支援センターやサポートセンター、ボランティアの助けを借りながら、支援の方法を考える福祉学からのアプローチは、互いに無関心だった住民が、相手を気にかけるきっかけになります。また、気にかけることが、相手を理解し、行動につながるという心理学の考え方も現場では役立ちます。住民を主体にした見守り活動の推進には、心理と福祉の両面から柔軟に対応していく必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 現代社会学部 現代社会学科 教授 野﨑 瑞樹 先生
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