強い台風と戦いつつ環境も守る!強くて優しい未来の消波ブロック
台風の高波から命や財産を守る消波ブロック
Google Earthで日本列島を見ると、国土を縁取るように、海岸線にコンクリートの消波ブロックが積み上げられているのがわかります。「テトラポッド」という商品名のものがよく知られていますが、たくさんのメーカーが技術を結集して様々な形のものを作っており、重さは500キログラムから100トン以上と多様です。
台風などによる大きな波は破壊的なエネルギーを持ちます。この強大な波の力を低減し、沿岸の生命・財産を護るのが消波ブロックです。消波ブロックがないと、波が堤防を乗り越え、後ろにある住宅や道路が被災してしまいます。
地球温暖化で強くなった台風に立ち向かう
複雑な形の消波ブロックをたくさん積み上げると、無数の隙間ができます。隙間の中で水が衝突を繰り返すことで波のエネルギーが消えていきます。
ところが、地球温暖化の影響で台風の特性も変化しており、既存の消波ブロックの能力を超える大きな波が発生し、越波による浸水被害が増えています。この傾向は続くと考えられ、日本全体で、将来の波の大きさを見越して消波ブロックを補強する必要に迫られているのです。そこで、限られた予算内、時間内で効果的に消波できる形状や工法の研究が行われています。
防災と環境保護を両立させるのが課題
また、温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにする「カーボンニュートラル」の観点から、海の生態系への配慮も欠かせません。
海の藻類や植物プランクトンは地球全体のCO₂の吸収・固定において、陸上の植物よりも大きな役割を担っていますが、消波ブロックを設置すると、一時的に藻類などの生態系を破壊してしまいます。藻類は時間とともに回復してくるのですが、その回復時間を短くする消波ブロックも研究されています。コンクリートの中にアミノ酸を混ぜ、海中に染み出すようにしたところ、微細藻類の生長スピードが従来の10倍以上になったのです。
このように、これからの時代の消波ブロックには、防災と環境の両面からの研究が必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
西日本工業大学 工学部 総合システム工学科 土木工学系 准教授 松下 紘資 先生
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