構造物の「見えない傷み」を見つけ出せ!
目視の限界を超えるための技術
橋や道路などのインフラが損傷すると、社会生活に大きな影響を与えます。現在はその安全性を確保するため、定期的に目視による点検が実施されています。ただし、例えば大きな橋を対象としたときに、わずか0.2ミリほどの、けれど重篤な状態につながるひび割れを見つけることはなかなか困難です。
そこで今、振動を検知するセンサなどを取り付けて得られたデータを分析し、構造物の不具合を発見するという研究が進められています。
「いつ?」を見える化
これまでの経験や研究によって、構造物の部材(パーツ)がどのように壊れるかはおおよそ判明しています。ただ、それが「いつ」壊れるのかはわかりません。そこでこの研究では、センサなどで常時監視できるという利点を活かして、人の目よりも早く不具合を見つけることをめざしているのです。
ところで構造物は、その種類によって特徴を持っています。それを考慮して、できれば構造物の不具合がひび割れなどの目に見える現象になる前に、「不具合が起こりそう」な場所を推測して「早めに手を打つ」(=点検・措置を行う)のが理想です。まだ研究はその段階に至っていませんが、多くの研究者がそれぞれの視点でアプローチを重ねており、「理想」に到達できるよう尽力している真っ最中です。
社会の安全維持のその先に
また、センサと画像、いわば線と面の情報を両方カバーして「使える」データを最大限に組み合わせながら分析するという手法も生まれました。さらに、AIや機械学習といった技術も活用されるようになっています。現在行われている構造物の観察にこれらの技術をプラスすることで、研究のとらえ方や、テーマに対するアプローチの仕方が大きく変化することも予測されています。それにより、「社会の安全を保つ」という重要な働きがさらに磨かれていくでしょう。
加えてこの研究は、労働人口減少などの社会的課題の解決に結びつく、構造物の維持管理の合理化および効率化にも貢献すると考えられています。
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先生情報 / 大学情報
長崎大学 工学部 社会環境デザイン工学コース 准教授 西川 貴文 先生
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