「街の風景」をつくる「住まいのデザイン」
風土や人々の暮らし方が、その街の風景を作る
あなたは、自分が住んでいる街の風景は好きですか? 世界各地の街には、その地域の風土や暮らしぶりを反映した独自の風景があります。しかし我が国では戦後から高度成長期にかけて、膨大な需要に応えるために画一的な住宅が大量に建設され、地域固有の「風景」が失われてしまった街も少なくありません。さまざまな理由で建築は建て替わっていきます。新しく建てられる建築に、その地域の風土や生活文化を反映したデザインがなされていけば、街の風景の「核」となる部分は受け継がれていくはずです。
地域の気候に応答する住まい
南北に細長い日本では、地域ごとに気候条件もさまざまです。地域に残る伝統的な民家には、その気候条件に対応するさまざまな知恵が備わっています。例えば「合掌造り」など雪の多い地域特有の屋根の形や、敷地を囲む「築地松」など風の強い地域特有の防風林などはその一例です。こうした伝統的な民家がつくる風景は、「文化的景観」として近年その価値が見直されつつあります。
一方で、家族形態や暮らしぶりは時代とともに変化していきます。変化する需要に応えながら、伝統民家の知恵に学び地域の気候に対応する新しい住まいの形を考えることが、現代の街の風景を創造する上で重要と言えるでしょう。
災害復興における風景の継承
地震大国である日本の場合、家や街並みを一から造り直さねばならないこともあります。その場合も、新しい家をむやみに建築するのではなく、その土地ならではの環境や暮らしぶりに応える住まいのイメージを構想し、地域で共有していくことが重要です。そうすれば街並みが新しくなった後も、故郷への思いや生活文化を継承していくことができるでしょう。家と地域とのつながりや、地域コミュニティの形態などをヒントに、そこに住む人々が愛着を持てる住まいと街のあり方を研究するのが、「住まいのデザイン学」の醍醐味です。
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先生情報 / 大学情報
西日本工業大学 デザイン学部 建築学科 准教授 三笠 友洋 先生
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先生への質問
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