プラズマ治療のメカニズムを解き明かせ

プラズマ治療のメカニズムを解き明かせ

プラズマは物質の4態目

固体の氷は熱を加えると液体の水になり、さらに熱を加えると気体の水蒸気になります。では、水蒸気に何万度という高い熱を加えるとどうなるでしょうか? 水分子から電子が飛び出したプラズマの状態になります。つまり、物質は3態ではなく、実はプラズマという4態目があるのです。自然界では雷や太陽、オーロラがプラズマの状態であり、雷は雲の中で高い電圧の放電が起こることでプラズマが発生したものです。

プラズマが起こす化学反応を可視化する

プラズマはがんや傷の治療に効果があることがわかっています。しかしなぜ治療効果があるのか、メカニズムの多くはまだ解明されていません。そこでプラズマが生体にどのように作用しているかを調べるために、プラズマを照射した際の化学反応を可視化して解析します。人体の約60%は液体でできているので、まずは化学反応をすると色が変わる特殊な薬品にプラズマを照射し、その時の液体の流れの変化を観察します。その結果を踏まえてゲル状の模擬生体にプラズマを照射します。プラズマが当たった表面に化学反応が起きた後、その化学反応は連鎖的に深さ方向に進んでいきます。これにより今まで誰も見ることができなかった深さ方向への化学反応が、プラズマ照射によりどう進展しているのかを可視化することができます。何がこの反応を引き起こしているのかの解明がこれからの研究の目標です。

安全にプラズマを使うために

現在はがん細胞を移植したマウスにプラズマを当てて治療効果を確認する動物実験が進められています。実際に医学的に安全な技術にするためには、プラズマが人体にどのような物理的・化学的影響を与えるかを全て理解した上で、制御しながら使うことが求められます。また実験的にはさまざまな照射方法が可能であることを明らかにしてきましたが、広く浅い照射か、ピンポイントに深い照射かなどを治療内容に合わせて考える必要もあります。今後さらに工学と医療が連携して研究すれば、医療現場でプラズマ治療が使われる日も遠くないでしょう。

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先生情報 / 大学情報

西日本工業大学 工学部 総合システム工学科 電気情報工学系 教授 川崎 敏之 先生

西日本工業大学 工学部 総合システム工学科 電気情報工学系 教授 川崎 敏之 先生

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電気情報工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

理解できないことを考え続けると辛くて飽きてしまうこともありますが、そこでやめてしまうのではなく、継続して考えることが大切です。私のプラズマの研究の中でも、見えない現象を可視化する過程では、思い通りにいかないことがたくさんあり、成功に至るまでには長い時間を要しました。でも、考え続けていればいつかは答えが出ます。
そうやって出てきた答えはオリジナルなものです。答えを導くためには、そのヒントが意外なところに隠れているかもしれませんから、自分に関係なさそうな分野にも興味を持つ姿勢が大切です。

先生への質問

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西日本工業大学に関心を持ったあなたは

1967年、「人を育て技術を拓く」をモットーに、苅田町に工学部を開設。機械工学・電気情報工学・土木工学分野の高度な専門技術を学びます。2016年には次世代のロボットや自動車の開発者を育てる知能制御コースを新設しました。また、北九州市の中心市街地にある小倉キャンパス[デザイン学部]には、建築学科と情報デザイン学科を設置。「工学」と「デザイン」を融合させた教育、研究を推進し、「知と地の創造拠点」を目指し、地域・行政・企業との連携で地域の課題解決に取り組み、社会のニーズに合ったエンジニアを育みます。