講義No.10928 看護学

「工夫しつづける看護」が高齢者の力になる!

「工夫しつづける看護」が高齢者の力になる!

食事は生きる力に影響する

看護師は、注射や採血など診察に関わることから、対象となる方の心身に関するケアなど、さまざまな役割を担っています。その中でも、食事に関わる業務は特に重要です。食べることは人間の根源であり、生きる力にも影響します。医療の現場では、対象者が気持ちよく、快適に食事ができるようにするための研究や工夫が進められています。

姿勢を変えるだけで大きな改善が

最近の研究では、食事の時に姿勢を整えると、食べる機能が高まることがわかってきました。ベッドの上では、骨盤を後ろに傾ける「仙骨(せんこつ)座り」という姿勢になることがありますが、この姿勢だと腹部を圧迫するだけでなく、食べる動作がしにくくなります。ところが、骨盤を立て姿勢を正しくすると、自分でスプーンが持て、口に運びやすくなります。食べ物が飲み込みやすくなり、嚥下(えんげ)状態がよくなります。姿勢を変えるだけで、食事の量が増え、便通、排泄も改善されるのです。姿勢を整えるためには、ベッド上での体の位置やリクライニングの角度を確認し、背中やお尻の下にバスタオルなどをあてて調整します。

看護の工夫で患者の力を引き出す

また、食事のしやすさには、スプーンなどの道具も大きく関係します。食事を介助する場合にはスプーンのヘッドが小さいものがよいとされていますし、自分で食べる場合はスプーンの柄が長い方がよいです。スプーンの柄が短いと食べ物をお皿から持ち上げて口に運ぶまでに腕を大きく動かす必要がありますが、柄に長さがあると、口に運ぶまでの動作が少しで済み、楽になります。高齢者など腕を動かしにくくなっている人は、食べることに疲れてしまい、自分で食べる楽しみが損なわれてしまうのです。
対象者と日々向き合う看護師は工夫を重ね、看護技術を高めることで、真に患者のためになる支援を探求していきます。「優しい看護」という言葉をよく耳にすることがあります。看護師は優しさにプラスして、理論的に身につけた知識を持って、対象者に関わることが大切なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

新潟県立看護大学 看護学部 地域生活看護学領域 老年看護学 准教授 原 等子 先生

新潟県立看護大学 看護学部 地域生活看護学領域 老年看護学 准教授 原 等子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

老年看護学、認知症ケア

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが看護を志しているなら、街中や電車などで困っている人を見かけたとき、「どのように対応、支援したらよいだろう」と日々考えてほしいと思います。
学びの方法の一つとして、厚生労働省が日本各地で開いている「認知症サポーター養成講座」があります。認知症の人への理解と知識を深める講座で、高校生も受講できます。「認知症の人にやさしい街づくりは、誰もが住みやすい街」という考えから実施されており、自治体が窓口になっています。学びのきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

新潟県立看護大学に関心を持ったあなたは

新潟県立看護大学は「看護学」に特化した県立の単科大学です。学部から大学院博士後期課程まで開設しており、看護学のエキスパートが一貫した看護教育課程を提供しています。
地域とのつながりを重視し、地域と連携した教育カリキュラムを実現しているほか、令和4年度入学生より、「新潟学」「総合実習Ⅱ(地域包括ケア実習)」等、地域志向科目を新設します。
さらに、個々の学生の関心により看護学の専門分野が学べる科目「新生児看護論」「認知症ケア論」「エンドオブライフケア論」等も始まります。
本学でともに学びませんか?