「工夫しつづける看護」が高齢者の力になる!
食事は生きる力に影響する
看護師は、注射や採血など診察に関わることから、対象となる方の心身に関するケアなど、さまざまな役割を担っています。その中でも、食事に関わる業務は特に重要です。食べることは人間の根源であり、生きる力にも影響します。医療の現場では、対象者が気持ちよく、快適に食事ができるようにするための研究や工夫が進められています。
姿勢を変えるだけで大きな改善が
最近の研究では、食事の時に姿勢を整えると、食べる機能が高まることがわかってきました。ベッドの上では、骨盤を後ろに傾ける「仙骨(せんこつ)座り」という姿勢になることがありますが、この姿勢だと腹部を圧迫するだけでなく、食べる動作がしにくくなります。ところが、骨盤を立て姿勢を正しくすると、自分でスプーンが持て、口に運びやすくなります。食べ物が飲み込みやすくなり、嚥下(えんげ)状態がよくなります。姿勢を変えるだけで、食事の量が増え、便通、排泄も改善されるのです。姿勢を整えるためには、ベッド上での体の位置やリクライニングの角度を確認し、背中やお尻の下にバスタオルなどをあてて調整します。
看護の工夫で患者の力を引き出す
また、食事のしやすさには、スプーンなどの道具も大きく関係します。食事を介助する場合にはスプーンのヘッドが小さいものがよいとされていますし、自分で食べる場合はスプーンの柄が長い方がよいです。スプーンの柄が短いと食べ物をお皿から持ち上げて口に運ぶまでに腕を大きく動かす必要がありますが、柄に長さがあると、口に運ぶまでの動作が少しで済み、楽になります。高齢者など腕を動かしにくくなっている人は、食べることに疲れてしまい、自分で食べる楽しみが損なわれてしまうのです。
対象者と日々向き合う看護師は工夫を重ね、看護技術を高めることで、真に患者のためになる支援を探求していきます。「優しい看護」という言葉をよく耳にすることがあります。看護師は優しさにプラスして、理論的に身につけた知識を持って、対象者に関わることが大切なのです。
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先生情報 / 大学情報
新潟県立看護大学 看護学部 地域生活看護学領域 老年看護学 准教授 原 等子 先生
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