講義No.12209 経営学・商学

センサリーマーケティング 五感の経験が消費者の行動を変える

センサリーマーケティング 五感の経験が消費者の行動を変える

五感を活用したマーケティング

商品の味や香り、質感、店内のBGM、広告のデザインなど、マーケティングでは消費者の五感に訴えかけるさまざまな要素を活用することがあります。これはセンサリーマーケティングと呼ばれています。ビジネスでは古くから実践されてきましたが、体系的に研究されるようになったのは、2010年ぐらいからです。研究が進むにつれ、五感の経験が消費者行動に及ぼす影響にフォーカスした「センサリーマーケティング」という領域が生まれました。

写真の位置で行動が変化

食品のパッケージに掲載する商品画像の位置によって、消費行動がどう変わるのかを明らかにするため、実験が行われました。その結果、写真をパッケージの下側に載せると食べる量が減ることがわかりました。これは視覚から得た情報を、消費者自身の経験と結びつけているからだと考えられています。
人は幼い頃からの経験によって、上にある物は軽く、下にある物は重いということを学習します。例えば軽い風船は上に浮き、重い石は下に沈む、などの現象は多くの人が知っています。そのためパッケージの下側に掲載された写真を見ると、「これは重い物だ」と連想する傾向があるのです。重さという連想から、商品の風味も味覚的に「重い」と感じ、すぐに飽きてしまった結果、食べる量が少なくなるという仕組みも明らかになりました。

持続可能なマーケティングに向けて

パッケージの画像位置のように、五感を通じた経験が、知らず知らずのうちに消費者行動に影響を与えます。これをうまく活用すれば、消費者によりよい選択をうながすようなマーケティングができるかもしれません。単に商品の購入をうながすのではなく、消費者の健康に貢献したり、環境にやさしい物を選ばせたりするのです。これは企業にもメリットがある手法だといえます。現代では企業は商品を売って利益を出すだけでなく、社会に貢献することも求められているからです。マーケティング分野の研究でも、SDGsやサステイナブルな消費に貢献することが重要な役割なのです。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 経済学部 経営学科 准教授 外川 拓 先生

上智大学 経済学部 経営学科 准教授 外川 拓 先生

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経営学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日常の買い物、食事、旅行などで接する現象を当たり前と思わず、関心を持って注意を向けることからスタートしてみてください。なぜだろう、どのように行われているのだろう、と疑問のアンテナを張り続けることが大切です。
また、「何がやりたいかわからない」と悩んでいるときは、疑問のアンテナがオフになっているかもしれません。アクションにつながるきっかけは山のように存在しています。アンテナをオンの状態にして、世の中の疑問に気づく。それを続けていれば、究めたいと思えるテーマに出会えるかもしれません。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。