センサリーマーケティング 五感の経験が消費者の行動を変える
五感を活用したマーケティング
商品の味や香り、質感、店内のBGM、広告のデザインなど、マーケティングでは消費者の五感に訴えかけるさまざまな要素を活用することがあります。これはセンサリーマーケティングと呼ばれています。ビジネスでは古くから実践されてきましたが、体系的に研究されるようになったのは、2010年ぐらいからです。研究が進むにつれ、五感の経験が消費者行動に及ぼす影響にフォーカスした「センサリーマーケティング」という領域が生まれました。
写真の位置で行動が変化
食品のパッケージに掲載する商品画像の位置によって、消費行動がどう変わるのかを明らかにするため、実験が行われました。その結果、写真をパッケージの下側に載せると食べる量が減ることがわかりました。これは視覚から得た情報を、消費者自身の経験と結びつけているからだと考えられています。
人は幼い頃からの経験によって、上にある物は軽く、下にある物は重いということを学習します。例えば軽い風船は上に浮き、重い石は下に沈む、などの現象は多くの人が知っています。そのためパッケージの下側に掲載された写真を見ると、「これは重い物だ」と連想する傾向があるのです。重さという連想から、商品の風味も味覚的に「重い」と感じ、すぐに飽きてしまった結果、食べる量が少なくなるという仕組みも明らかになりました。
持続可能なマーケティングに向けて
パッケージの画像位置のように、五感を通じた経験が、知らず知らずのうちに消費者行動に影響を与えます。これをうまく活用すれば、消費者によりよい選択をうながすようなマーケティングができるかもしれません。単に商品の購入をうながすのではなく、消費者の健康に貢献したり、環境にやさしい物を選ばせたりするのです。これは企業にもメリットがある手法だといえます。現代では企業は商品を売って利益を出すだけでなく、社会に貢献することも求められているからです。マーケティング分野の研究でも、SDGsやサステイナブルな消費に貢献することが重要な役割なのです。
参考資料
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上智大学 経済学部 経営学科 准教授 外川 拓 先生
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