講義No.12218 生物学

クワガタムシの大あご形成メカニズムを探る

クワガタムシの大あご形成メカニズムを探る

クワガタムシの大あご

大きなあごを持つ昆虫のクワガタムシですが、オスとメスでは大あごの発達度合いが極端に異なっています。クワガタムシのオスとメスが持つ遺伝子のセットはほぼ同じであるにもかかわらず、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。またオスのあごが大きく発達するのはなぜなのでしょうか。遺伝子発現のメカニズムや形態形成に関わる遺伝子の研究がなされています。

遺伝子をノックダウンして機能を解析

ある遺伝子の働きを知るには、その遺伝子の機能を一時的に阻害(ノックダウン)する方法が用いられています。その結果生じた昆虫の形の変化を分析して、その遺伝子の機能を推定するのです。例えば、幼虫の段階でdsxという遺伝子をノックダウンすると、オスは大あごが発達せず、反対にメスにはややオスらしい特徴が現れ、どちらもオスとメスの中間のような形態になります。この結果から、dsx遺伝子は性の分化に関わりのある遺伝子であると推定できます。ノックダウンするには、機能を抑えたい遺伝子と同じ配列を持った二本鎖RNAを注射します。二本鎖RNAは、本来生物の身体にはない二重らせん構造のRNAです。そのため体がウイルスの攻撃だと判断し、同じ配列の正常なmRNAも一緒に壊してしまい、遺伝子の機能が一時的にストップするのです。

大あご形成に関わる遺伝子を探す

たくさんある遺伝子の中から解析対象の遺伝子をピックアップするには、すでに機能のわかっているヒトやマウスなどのモデル生物の遺伝子を参考にします。遺伝子の機能は生物間でかなり共通しているためです。例えば大あごが大きく発達するクワガタムシのオスでは、大あごの生成時に細胞分裂がたくさん起こっていると考えられます。そこで細胞分裂や細胞増殖を制御するようなモデル生物の遺伝子群を調べて、それに相当するクワガタの遺伝子を解析します。このような研究の結果、大あごの生成にはどのような遺伝子が関わっているのか明らかになりつつあります。

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先生情報 / 大学情報

静岡大学 理学部 生物科学科 助教 後藤 寛貴 先生

静岡大学 理学部 生物科学科 助教 後藤 寛貴 先生

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進化発生生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は大好きなクワガタムシの研究がしたくて大学院に行きました。そのまま博士課程に進んで、今はクワガタムシの研究を仕事にしています。自分が楽しいと思うことを仕事にできた私はラッキーなのかもしれませんが、もしあなたが何かを研究したいと考えているのであれば、やはり自分の好きなこと、面白いと思ったことに取り組んでほしいです。「好きこそ物の上手なれ」という言葉にもあるように、自分の能力を伸ばすことができます。ぜひ楽しいと思うことに突き進んでください。

先生への質問

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静岡大学は、7学部を擁する総合大学のメリットを生かし、学生の知的探究心に応えることができる幅広い学問領域の教育を実施しています。大学の理念は「自由啓発・未来創成」であり、これは自由によってこそ自己啓発を可能にし、それを通じて、平和かつ幸福な未来を創り出すとの力強い思いを表明しています。
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