クワガタムシの大あご形成メカニズムを探る
クワガタムシの大あご
大きなあごを持つ昆虫のクワガタムシですが、オスとメスでは大あごの発達度合いが極端に異なっています。クワガタムシのオスとメスが持つ遺伝子のセットはほぼ同じであるにもかかわらず、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。またオスのあごが大きく発達するのはなぜなのでしょうか。遺伝子発現のメカニズムや形態形成に関わる遺伝子の研究がなされています。
遺伝子をノックダウンして機能を解析
ある遺伝子の働きを知るには、その遺伝子の機能を一時的に阻害(ノックダウン)する方法が用いられています。その結果生じた昆虫の形の変化を分析して、その遺伝子の機能を推定するのです。例えば、幼虫の段階でdsxという遺伝子をノックダウンすると、オスは大あごが発達せず、反対にメスにはややオスらしい特徴が現れ、どちらもオスとメスの中間のような形態になります。この結果から、dsx遺伝子は性の分化に関わりのある遺伝子であると推定できます。ノックダウンするには、機能を抑えたい遺伝子と同じ配列を持った二本鎖RNAを注射します。二本鎖RNAは、本来生物の身体にはない二重らせん構造のRNAです。そのため体がウイルスの攻撃だと判断し、同じ配列の正常なmRNAも一緒に壊してしまい、遺伝子の機能が一時的にストップするのです。
大あご形成に関わる遺伝子を探す
たくさんある遺伝子の中から解析対象の遺伝子をピックアップするには、すでに機能のわかっているヒトやマウスなどのモデル生物の遺伝子を参考にします。遺伝子の機能は生物間でかなり共通しているためです。例えば大あごが大きく発達するクワガタムシのオスでは、大あごの生成時に細胞分裂がたくさん起こっていると考えられます。そこで細胞分裂や細胞増殖を制御するようなモデル生物の遺伝子群を調べて、それに相当するクワガタの遺伝子を解析します。このような研究の結果、大あごの生成にはどのような遺伝子が関わっているのか明らかになりつつあります。
参考資料
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静岡大学 理学部 生物科学科 助教 後藤 寛貴 先生
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