植物が、動物・昆虫・自然の保全と再生の手がかりとなる
野外で生育する植物からその場の環境を診断
SDGsなどで自然保護が叫ばれています。自然を守り、人が自然とうまく付き合うには、自然のしくみを明らかにすることが必要です。
まず、各種の植物が育つ環境を、それぞれ明確にします。すると、逆にその植物が育成している環境がわかっていきます。植物から、その地の環境診断ができるのです。また、森林や草原、湿原はさまざまな動物や昆虫を育んでいます。植物は生態系ピラミッドでいう上位の摂食者の草食動物、昆虫などの餌になり、更に上位の肉食捕食者から身を隠すシェルターの役割も持ちます。動物や昆虫などと植物との関係を解明すると、植物の状態からその地の生態系も見えてきます。
自然の状態で生き物の保護・保全・再生
現在、自然環境の破壊から、絶滅危惧にある動植物種があります。例えば、絶滅危惧の動物がいたときに、動物園や研究所で、人工的に餌を与え、飼育され維持された動物の存在は、望ましい状態でしょうか。動物も植物も何十億年という地球環境の変遷にさらされ、その中で進化してきたものです。ですから、そうした自然の地球環境と切り離されて生きていれば、「その生物が、現在の地球環境で生息・生育していることの意味」が半減してしまいます。もちろん、動物園でも研究所の中でも、命のリレーがつながっていることは尊いことです。しかし、絶滅危惧種を保護するためには、対象となる絶滅危惧種だけでなく、それを取り巻く環境と共に守ることが大切です。一種をまもるのではなく、生態系全体を守るのです。このためには、その場で生育する植物の種類やその組み合わせ、光・水などをデータ化し、統計処理や解析する必要があります。そうです、この作業は、データサイエンスでも有るわけです。
生態系全体の把握から自然保護へ
これらの情報は、自然保護や土砂災害の防止に役立ちます。
そして今、温暖化により植物や動物の分布が変わりつつあります。自然を守るには、こうした現場の実態を知り、全体の生態系を把握することが大切なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪産業大学 デザイン工学部 環境理工学科 教授 島野 光司 先生
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生態学、植物保護科学、環境学先生が目指すSDGs
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