方言は独立した言語! 多様な日本の言葉から世界を見る

方言は独立した言語! 多様な日本の言葉から世界を見る

一つの国、多くの言語

「方言」と呼ばれるものが、実は独立した「言語」ととらえられることを知っていますか? 特に沖縄の言葉は本土の言葉とは大きく異なります。言語学では互いに通じない言葉は別の言語と考えるため、沖縄の言葉と東京の言葉は「異なる言語」なのです。これは世界共通の現象で、イタリアでも南北で互いに通じない言葉が話されていますし、イギリスにもウェールズ語やゲール語が残っています。このような言語の多様性はその地域の文化や歴史、人々の価値観を映し出す鏡なのです。

「失われゆく言葉」の記録

残念ながら、多くの地域言語や方言が消滅の危機に瀕しています。かつて沖縄の学校では地元の言葉を話すことに対して罰則がありました。現在は保護の動きもありますが、若者で話せる人は減少しています。言語学者の重要な役割の一つは、「フィールド言語学」の手法などを用いて、失われゆく言葉を科学的に記録することです。現地の話者と協力して単語リストを作成したり、文法規則を分析したり、自然会話を録音して詳しく調べます。話者は無意識に言語ルールを使いこなしていますが、それを明示的に記述するのが言語学者の仕事です。こうした記録作業は地域の人々からも感謝され、言語とともに文化も守ることにつながります。

言語と文化の関係性

言語は単なる道具ではなく、その背後に文化や思考様式があります。「日本語には敬語があり外国語にはない」と思われがちですが、実際は多くの言語に敬意表現はあります。日本語で「行けたら行きます」と誘いを間接的に断る表現も、イタリア語に同様の表現が存在します。どの言語にも、相手への配慮や社会的関係を表す方法があるのです。
言語には表面的な違いの背後に共通原理があり、それを理解することは異文化理解の鍵となります。外国語学習も大切ですが、自分の地域の言葉や文化にも目を向けることで豊かな視点を持てます。世界と足元、両方に目を向けることで言語と文化の多様性の価値を理解できるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大東文化大学 外国語学部 日本語学科 助教 カルリノ サルバトーレ 先生

大東文化大学外国語学部 日本語学科 助教カルリノ サルバトーレ 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

フィールド言語学、文化人類学

メッセージ

あなたの周りの言葉に耳を傾けてみてください。方言や地域の表現には、その土地の歴史や人々の知恵が詰まっています。外国語学習も大切ですが、自分のルーツとなる地域の言葉も同じように価値があります。言語は、一度失われると取り戻すのは困難です。私はイタリア出身ですが、故郷の方言と日本の地方の言葉に同じ魅力を感じています。好きなことから始まった興味を突き詰めることで、思いがけない道が開くでしょう。身近なものと遠くのもの、両方に目を向けて自分だけの世界を広げてください。

大東文化大学に関心を持ったあなたは

大東文化大学は、文、外国語、経済、経営、法、国際関係、スポーツ・健康科学、社会学の8学部20学科を擁する総合大学です。進路に合わせて自由に選べる科目の多さと、他学科の科目も選択できるカリキュラムも特徴のひとつ。1923年に当時の国会決議によって設立された本学の建学精神は「東西文化の融合」。この精神は今も息づいており、毎年約300名の学生が海外に留学し、海外からは400名の留学生が学ぶ国際色豊かな大学です。また伝統的に公務員・教員への就職に強く、全国各地で卒業生が活躍しています。