ドローン(マルチロータ機)の開発は、まだ始まったばかり!
マルチロータ機の空気力学
空を飛ぶ小型機械が広く「ドローン」と呼ばれていますが、この名称はまだ人によって定義が曖昧です。専門的には、3つ以上の回転翼を使って飛ぶ機械を「マルチロータ機」と呼びます。現在、このタイプの無人航空機の開発が盛んに行われています。
機体の開発で重要な要素の1つが、空気の流れを考える「空気力学」です。機体周りの空気の流れを理解することで、航空機は効率的かつ安全に飛ぶことが可能になります。翼をもつ一般的な飛行機と比べて、マルチロータ機周りの空気の流れはかなり複雑です。
複雑な空気の流れを読む。
ヘリコプタなどの回転翼機は、その周囲に複雑な空気の流れを作り出します。マルチロータ機のように回転翼が多いと、複数の流れが互いに干渉し合うことで、さらに複雑に変化します。
空気の流れは目に見えませんが、煙を使うなどして流れを可視化して観測することができます。コンピュータで空気の動きをシミュレーションする研究も進んでいますが、実際には計算と違う結果が出ることもあるため、航空機開発において、実験は必須です。
火星や土星の衛星へ!
小型のマルチロータ機は、映像撮影などに利用されています。今後は、物資の輸送や人間が入れない場所の探索、また将来的には有人飛行ができる航空機など、さまざまな用途が期待されています。さらに、火星や土星の衛星タイタンの探査に、マルチロータ機を使う計画もあります。火星の大気密度は地球の約100分の1、逆にタイタンの大気密度は地球の約4倍です。そんな大気中で性能を発揮するためにはどんな機体が必要なのか、これを考えるために空気力学の知見が必要になります。
流行していると言えるマルチロータ機ですが、まだまだ開発の余地があります。単に空を飛ぶという点では成功していますが、多様な用途を想定した場合に、それに適した性能を追究する必要があります。これからがマルチロータ機開発の本番だと言えるでしょう。
参考資料
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金沢大学 理工学域 フロンティア工学類 助教 大塚 光 先生
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